こんにちは。マスコットのビギナー君です。
さて、みなさん、ついに十月がやって来ました! 十月ですよ。十月!
僕は十月になるといつも涼しくてウキウキしていたものでした。
ふんどし一丁だと寒いので、首に毛糸のマフラーを巻いて……。
え? 色は何かって? それは真っ赤に決まっているじゃないですか? 血の赤。トマトの赤。広島カープの赤……。
そう、それをくれたのは小学生の頃の恋人のAちゃんでした。Aちゃんは編み物の名人で、基本的になんでも作ることができました。ライオンや、虎や、禿げたおじさんや、太ったおばさんや、菩薩ぼさつ像や、ギザのピラミッドまで、なんでも!
一度ローカルテレビが取材に来たことがありました。「天才少女現る!」とかなんとか題してね。
僕は彼女の家の庭の隅からそれを覗いていました。もちろんふんどし一丁でね。彼女は短い放送時間の間に——それは生放送でした——次々と編み物を完成させていきました。その手の動きはあまりにも素早いので、肉眼で見ているとスローモーションに感じられました。しかし実際に作品は生み出されていきます。彼女はまず、「四十肩に悩まされる小太りの中年女性」という作品を編み上げ、次に「おなかを掻いてほしくてたまらないのに誰も掻いてくれなくて寂しすぎるピットブル」を編み上げました(あの哀愁のある目といったら!)。最後に「煮干しを口いっぱいに頬張るマーガレット・サッチャー」を編み上げ、取材に来ていたテレビ局の人間たちを驚かせました。将来の夢は? という質問に、彼女は平然とした顔でこう答えたのでした。「ある人の奥さんになることです」と。そしてその人のために特別な赤いマフラーを編んだのだと言いました。そこで放送は終わりました。テレビ局の人間たちが帰ったあとに、僕は彼女の部屋の窓に小さな石をぶつけました。彼女は二階から顔を出しました。僕はふんどし一丁で飛び跳ね、彼女がいかに常軌を逸して見えたのかを説明しました。彼女はふふふと笑い、そこから赤いマフラーを落としてくれました。僕はそれを首に巻き、なぜか黄昏たそがれた気持ちになって、近くの川の流れをじっと見ていたのでした。
彼女はその後すぐに引っ越してしまいました。連絡は一度も来ていません。あの約束を覚えているのかどうかも。いずれにせよ僕はこのマフラーを持ち続けています。心のどこか深い、孤独な場所を、そっと温めてくれるような気がするからです。
以上。お元気で。チャオ。

今年もあっという間に十月がやって来ましたね。十月というのは私にとっては特別な月です。というのも十月に私は生まれたからなんですが、子供の頃は誕生日プレゼントなんてものはありませんでした。戦時中でものがありませんでしたし、うちはひどく厳しい家だったのです。
父親は質素倹約を絵に描いたような人で、いつも米粒ひとつしか食べませんでした。それで筋骨隆々なのです。私は幼いながらも何か変だと思いました。きっと裏で特殊なプロテインを飲んでいるに違いない……。
私は夜寝たふりをして、父を観察することにしました。私はそっと部屋を抜け出し、外で待っていました。すると案の定、彼は外に出てきました。下駄を履いて、テクテクと山の方に歩いていきます。そうか、きっとここに秘密の冷蔵庫があって、プロテインがその中に隠されているんだ、と私は思いました。
しかし秘密の冷蔵庫なんてものはいつまで経っても出てきません。どんどんどんどん暗くなっていきます。ふくろうが鳴き、虫たちがざわめいていました。不気味な夜でした。父は臆した様子も見せずに、さらに先に進み、ある小さな沢のところに出ました。私は昼間もこんなところに来たことはなかったのですが、音で分かったのです。
父はそこに近づき、水を一口飲みました。「ああ」と言いました。そしてクルリと向きを変えて、家に戻ったのです。
私は彼をやり過ごし――たけの高い草の下に隠れていました。蚊に刺されましたが……――自分もその沢に行ってみました。それは秘密のプロテインなんかではなく、ごく普通の水でした。私はそれを真似して飲んでみました。うん、うまい。でもただの透明な水です。そして家に戻りました。
部屋に戻って、布団に入ると、あっという間に意識を失いました。夢の中で、私はすごいご馳走を前にしていました。テーブルの上に、丸焼きの豚だの、鶏だのが置いてあるのです。私はフォークでそれをつつきます。よだれが口から溢れてきます。しかし、つついた瞬間、なんということだろう! それは破裂して、中から水が出てきたのです。私はそれを飲もうとしましたが、飲む前に全部こぼれてしまいました。はっと見ると、そばに父が立っているのです。父は私に米粒をひとつ、渡してくれました。そしてこれを食べなさいと言ったのです。私はそれを食べました。すると……突然ムキムキになり、私は夢の中のボディビルの大会で優勝してしまったのです! アメリカ大会への切符をもらって喜んでいるときにはっと目覚めました。
朝になっていました。朝食の席でも父は米粒ひとつしか食べませんでした。私は昨日のことを訊こうかとも思いましたが、やめておきました。あれは秘密の水なのだと思ったからです。
私はその後の人生で苦しいとき、いつもあの沢の水のことを思い出したものです。透明で、まっすぐ自分の奥に浸透していきました。すべての細胞たちが喜んでいました。実はあれこそが人生で一番素晴らしい誕生日プレゼントだったんじゃないかと今では思っていますが。それでは。お元気で。また。

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