私が私であったとき
あなたはあなたではなかった
あなたがあなたであったとき
私は私ではなかった
世界が世界であったとき
闇は光ではなかった
世界が世界であったとき
死は愛ではなかった
青は青で
赤は赤だった
空気は空気で
水は水だった
あらゆるものが
動き続けるこの世界で
あなたがあなたである瞬間は
ほとんどないに等しい
しかし
それはゼロではない
おそらくは
たぶん
夢が夢であったとき
私はゆっくりと呼吸をしていた
本物の空気を
本物の命を
いつからか
何かが変わってしまって
永遠は
永遠ではなくなってしまったの
か
空が空であったとき
海が海であったとき
山が山であったとき
川が川であったとき
羊がメエーと鳴いていた
私はそれを聞き
同じようにメエーと鳴いた
風が吹いて
一瞬だけ光と闇を混ぜた
そのようにして
不完全な世の中が生まれたのだと
老人は語った
らしい
よ
私が私であったとき
いろんなものはもっとずっと切迫していた
そう、切迫していたのだ
それはまるで死がすぐそこに迫っているかのようだった
死
暗黒の、死
死が死であったとき
私は生を生きていた
それは歪められていない本物の生で
私はその記憶の残滓を
どこかに隠し持っているに過ぎない
どこに隠したのか
自分でも
覚えていないのだけれど
また
会うときまで
さよなら
グッバイ
では
また
ね