こんにちは。マスコットのビギナー君です。
さて、みなさん! ようやく9月がやって来ました!
いやあ、今年の夏も暑かったですね……。あまりに暑かったので、僕はもっぱら川の中で生活していました。なかなか楽しいですよ、あれ。魚とダンスを踊り、アブや蜂と交響曲を奏で……。
増水したときは危ないので岸に上がっていましたが。
さて、昔の奇妙な知り合いについて話したいと思います。なぜ彼について思い出したかというと……彼の誕生日が9月だったからです。彼は水が大好きな男でした。同じ小学校の一つ上の先輩だったのですが、なぜか僕とよくつるんでいたのです。全校生徒が彼のことを「水好き」として認識していました。学校の、公園の、図書館の、公民館の水道から毎日ゴクゴクと水を飲んでいました。「成長するためには水が必要なんだ」というのが彼の口癖でしたが、背はかなり低かったと記憶しています。実際3年生の頃には僕は彼を追い越していましたから。
プールの授業も大好きで、自己流の泳ぎを開発していました。クロールと平泳ぎと犬掻きの間くらいの泳ぎで、驚くほど速く進むことができました。当然、自由形の選手として市の大会に選ばれるのですが、大会当日に必ずお腹 を壊し、棄権してしまうのでした。彼はいつもオーバーで、「俺はもう駄目だ。とっておきのミネラルウォーターをお前にやるよ。冷蔵庫にあるからさ。じゃあ、天国で待ってるぜ……」とか言うのですが(顔色はひどく悪い)、翌日にはケロッとして、元気に校庭を走り回っているのでした。
そんな彼が誕生日の前日に夢を見ました。白い髭を生やした神様が、彼を案内し、森の奥の秘密の泉に連れて行く、という内容でした。そこからは人知れずこんこんと透明な湧き水が出ていて、ものすごく美味 しい、いや、「美味しいなんてもんじゃなく、魂が爆発するような味」だったそうです。
その森は神社の奥にあったのですが、その日曜の朝、彼は僕の家に来て一緒に探検しようぜと誘いました。自転車を漕ぎながらその話を聞いたのですが、どうやら一人では心細いから僕を誘ったらしいのです。僕もその透明な、特別な水を飲んでみたかったので、ワクワクしていました。
神社の境内に自転車を停め(彼は「俺のマシーン」と呼んでいましたが)、森に入りました。ヒヤッとして、薄暗くて、今まで聞いたことのないような鳥の声が聞こえて、かなりおっかなかったのですが、男の子ですから、それを悟られないように、意図して堂々と歩いていました。道は細くなり、彼の案内もかなりあやふやになっていきます。
「あれ? たぶん……こっち! かな……?」という風に。虫に刺され、ヒルに血を吸われながら我々は奥へ奥へと進んでいきました。そして……「あった!」とある地点で彼が叫びました。私は急いでその横に行きました。たしかにそこだけ地面が開けていて、穴が空いているように見えます。しかし……水がありません。まったく 、ないのです。彼は呆然としていました。僕もまた呆然としていました。水があったであろう場所には、暗闇だけが口を開けていました。底というものが見えません。ものすごく冷たい風が吹き上がってきました。彼はくるりと向きを変え、全速力で走り始めました。私も何も言わず、ただ彼のあとを追いました。なんとか自転車の場所に辿り着き、家に帰ったのですが、その間二人とも何も言いませんでした。見てはいけないものを見た、というのが共通の気持ちだったと思います。
彼はそれから少し大人しくなり、半年後に引っ越してしまいました。たしか北海道の方に行ったと思います。彼が今何をしているのかは分かりませんが、あの無邪気さを残していてくれたらな、とときどき思います。あの枯れてしまった泉、あの記憶は僕の中にはっきりと残り続けています。きっと彼も忘れてはいないはずです。あの闇には何か、特別なものが含まれていましたから……。
というのが僕の9月の思い出です。どうでしたか? え? 結論がない? そう、結論なんてないのです。この世のほとんどの物事には。
ということでみなさん、お元気で。涼しくなったからといって油断しないで、水分を取ってください。我々の体の60%は(たしか)水でできているのだから。
さて、ついに9月がやって来ました! あまりに暑かったので、いろんな計画を9月に回していたのですが……さて、それをすべて予定通りこなせるものやら、怪しくなってきました。まあこれは毎年のことなのですが。
計画の一つに、歩いて日本一周というのがあるのですが、これはもう少し涼しくなったらにしようと思います。いやあ私も歳ですからね。無理はできない。
しかし近いことを若い頃にやったことがあります。東京から青森まで、ひたすら歩いて移動したのです。寝袋を持っていたので、その辺で野宿していました。通りすがりの人に食べ物をもらったり、ときには家に泊めてもらったりもしました。私がまだ大学生だった頃のことです。いやあ、おおらかな時代だったんですな。
旅の途中で同じように汚い格好をした青年と知り合いました。彼は鹿児島から北海道を目指しているということでした。「お地蔵さんとしゃべった」とか、「木の虚に手を入れたら一万円札が出てきた」とか、ちょっと信じがたい話もしていましたが、まあ面白かったのでただ聞いていました。「君は何か面白い話はないのかい?」と彼は言いました。私はここまでの経験を彼に話しましたが、まあ普通のことです。さほど珍しい体験をしてきたわけではありません。「つまらなくてごめん」と私は言いました。
「いや、いいんだよ。正直でいい」と彼は言ってくれました。
その日は同じ河原で野宿をしました。彼は戦争で死んだ兄について話してくれました。五つ上の兄で、とても優しかったそうです。中国大陸に送られ、そこで戦死したそうでした。始めは村でも英雄と讃えられたそうですが、今では評価は一変してしまったそうです。「本当に、ひどいよな」と彼は言いました。「都合よく利用しているだけっていうか」
「そうだね」と私は言いました。
真夜中にカサカサという物音がして、目が覚めました。横を見ると、彼の寝袋の足元に蛇が見えました。茶褐色の蛇でした。彼は気付かずに寝ています。私は彼を起こそうとしたのですが……なんと! そこで金縛りに遭ってしまったのです。手も足も、口も動かせなくなってしまいました。蛇はゆっくりとゆっくりと彼の顔に近付いて行きました。何をするつもりなんだろう、と私は思って見ています(その日は満月でした。だからその光景がよく見えたのです)。と、突然、空から大きな鳥が飛んで来て、その蛇を咥えていってしまいました。どうやらトンビみたいでした。彼はそのタイミングで目を覚ましました。
「あ?」と寝ぼけた顔で彼は言います。
私は何も言えずに、ただ黙って見ていました。彼はまた目を閉じました。
翌朝、何事もなかったかのように、我々は先に進みました。すると彼がこんな話をし始めたのです。
「兄貴が亡くなったという知らせが届いたとき、蛇を見たんだ」と。
「蛇?」と私は言いました。
「そう、納屋の床下にさ、スルスルと這っていくのが見えたんだ。俺は庭にいてさ。茶褐色の蛇だった。俺はなぜかね、あれが兄貴だ、と思ったんだ」
「それは……そのあとどうなったんだ?」
「それっきりだよ。兄貴は実はさ、飛行機乗りになりたかったんだ。だけど適性検査で落とされて、歩兵になった」
「もしかして今空を飛んでいるかもしれない」と私は言いました。
「もしかしたら、な」と彼は空を見上げながら言いました。
そのときトンビが旋回しているのが見えました。翼を大きく広げて、まったく羽ばたかず、ただ風を受けてクルクル回っています。蛇の姿は見えませんでしたが、なぜか心が軽くなったことを覚えています。積乱雲が巨大な建築物のように、陰影を作って聳 えていました。別のトンビがやって来て、「ピーヒョロロロ」と鳴きました。我々はその少しあとに別れました。彼は海岸沿いのルートを取り、私はそのまま内陸を北に向かいました。若い頃の、時間がたくさん余っていた時代の出来事です。意味があったのか、なかったのかは分かりませんが、きっと自分にとっては必要な時間だったのだろうな、と私は思っています。なぜなら今思い出してじんわりと、そこにあった「滋味」のようなものを味わっているからです。あの蛇はどうなったんだろうな、と折に触れて私は考えていましたが……やがて忘れてしまいました。そして自分自身のことをかなり真剣に考えていたのです。
ということでみなさま、まだまだ暑いので熱中症には気を付けて。長距離を歩く際には交通事故にも気を付けてください。猛スピードで移動するのが大好きな輩 が結構いますので、彼らに轢かれないように。たまに猛ダッシュして勝負してみるのも楽しいかもしれませんが……(その際はアキレス腱を切らないように。私は前に一度切ったことがあります。時速48kmを記録したときのことです。岩手県岩手町で地元の軽トラと勝負したときのことでした 。負けてしまったのですが、健闘を讃えられてトウモロコシをいただきました。しばらくは入院生活でしたが……)
それでは、また。お元気で。ご機嫌よう。さようなら。バイバイ。





