こんにちは。マスコットのビギナー君です。
さて、みなさん! 五月がやって来ましたね。五月ですよ! 五月。
僕は子供の頃、五月になると毎年鯉のぼりを食べていました。いやあ、おいしかったな。ポリエステルよりはナイロンの方が好みでしたが。
刺身で食べるのも良いですし、一日酒に浸けておいたあとに焼いて食べるのもまたおいしかったです。オリーブオイルで炒めるというのもありましたね……。
しかしあるとき、近所の家で「鯉のぼりが盗まれた!」と騒ぎが持ち上がったのです。僕はキョトンとしていました。だってあれは野生の本物の鯉だと思い込んでいたからです。僕は午前二時に起きて、脚立を使って、眠っている鯉を捕まえたのだと思い込んでいたのですが……。
僕は防犯カメラの映像が決め手となって、窃盗の容疑で逮捕されてしまいました。実はその前年にインサイダー取引で執行猶予の付いた有罪判決を受けていたので(まだ八歳だったのですが)、今度は実刑を食らうことになりました。親からは勘当され、天涯孤独となった僕は、刑務所で新しい生活を送ることになります。しかしそこで広島カープの熱狂的なファンであるおじいさんと仲良くなり(常習的窃盗犯)、人生について色々と教わったのでした……。
出所した僕は前よりも強くなっていました。バレずに鯉のぼりを盗む方法も覚えましたし、ウェイトなしで身体を鍛える方法も学びました。しかし何よりも重要だったのは、社会から外れた人々との間にかなり親密なコミュニケーションを築き上げることができた、ということです。あの感覚はまだ残っています(彼らは単なる「ならず者」ではなかったのです)。その後両親は許してくれて、僕は家に戻ったわけですが……。
というのが僕の五月の思い出です。鯉のぼりを食べるときには注意してくださいね。他人のものではなく、野生の鯉のぼりを捕まえましょう。それでは。お元気で。

さて、今年もあっという間に五月がやって来てしまいました。気温も上がり、本格的に花々が咲き始めます。虫たちも活発に動き始め、風は気持ち良く、木々の葉はさわさわと揺れ……。いやあ、良いですね。生きてるって感じがします。実に、ね。
五月になると私は若い頃に「五月病」になったことを思い出します。最初は大学に行った頃でしたか。田舎を出て東京に出てきた私は、四月はがむしゃらに頑張り、そして五月も……と思ったところでゴールデンウィークが来てしまって、ものすごい重度のホームシックにかかってしまったのでした。何しろ山深い田舎で育ったもので、アスファルトジャングルには馴染めなかったのです。四月はそれも「気のせいだ」とごまかしていたのですが……。なかなか本心は騙せないみたいですね。私は一日中しくしくと泣き続け、夜に「何か悪いことをしてやろう」と思い付き、公園にいた酔っ払いのおじさんに、遠くから石を投げつけました。それは見事に彼の頭に当たり、「痛え!」と言った彼は、そのままぐったりと倒れ込んでしまいました。私は人を殺したと思い込み、ショックを受けて平常心を失って、そのままフラフラと歩き始めました。ええ、たしか三日三晩歩き続けたと思いますね。気が付いたら実家の近くにやって来ていました。私はそこではっと我に返り、近くの交番に自首しました。「僕は人を殺したのです」と。警官は面倒くさそうに東京の警察に連絡をしてくれました。でも誰も死んだという情報はありません。もちろん誰かは死んでいましたが(交通事故とか別の事件とかで)、私が石を投げた公園では誰も死んでいないと言うのです。「大丈夫だから安心しなさい」と彼は言いました。「いや、よく調べてください! 僕はクズなんです! 人殺しなんです!」と私は喚き通しました。でもやはりあの酔っ払いは死んではいなかったみたいなのです。私は実家に帰りました。そしてそこで鯉のぼりの刺身を食べ(ナイロンでしたが)、渋々東京に戻ってきました。夜行列車の窓を見つめながら(そこには私自身の姿が映っていました)、ため息をつき、はあ、またあの孤独な生活に戻るのか、と思いました。戻ってみると、不思議なことに、私のアパートに誰か知らない人がいました。部屋番号は間違っていません。私はかなり警戒しながら入りました。すると! そこにはなんとあの酔っぱらいがいたのです。きちんとスーツを着て、髪の毛も整えられています。こうしてみると、なかなかまともそうな人間であることが分かりました。彼は正座をして僕を迎えました。「よくぞ帰ってこられた」と彼は言っていました。「私はあなたに感謝しなければならないのです」
「どうして?」と私は訳が分からずに言いました。よく見ると彼のおでこにはこぶができていました。
「いや、私はあのとき競馬で負けて、酒をしこたま飲んで、もう人生を終わりにしてしまおうと思っていたのです。妻子さいしにはとっくに逃げられています。仕事も無断欠勤を繰り返していました。明日死のう、と思っていたところに、あなたが石を投げつけてきたのです。ものすごい苦痛が私を襲いました。人生で一度も感じたことのない苦痛です。でもその中で、私は生きたいと心から思ったのです。正確にはそう思っている自分を発見した●●●●、という方が近いですが。そして朝目覚めたとき、私は別の人間に変わっていました。さあ、今日からやり直そう、と決意し、別の仕事を探して、無事に採用されたのです。あなたの家は公園を捜査しに来た警官に聞きました。アパートの鍵は元々かかっていませんでしたよ。ハッハ。それで感謝の言葉を述べようと待っていたところだったんです。ところで鳩の丸焼きは食べませんか? あなたのために一羽手掴みで取っておいたんです。いやいや、間抜けな鳩でしてな」
「え?」と私は言いました。「僕は鳩の丸焼きが大好きなんです! 鯉のぼりの刺身と同じくらい、ですが」
「ポリエステルですか? ナイロンですか?」
「ナイロンです」
「いやはや。趣味が合いますな」
 そこで僕らは一緒に鳩の丸焼きを食べ、生涯の親友となったのでした。それが五月の思い出です。人生何が起こるか分かりませんな。それでは。お元気で。

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