短編小説 早口言葉の国 Posted on 2021年6月29日 by 村山亮 / 0件のコメント 「かえるピョピョピョピョ・・・三(み)ピョピョピョコ・・・。ねえ、お母さんこれって難しいね」 「そうだね。もっと頑張って言えるようになろうね」 という親子の会話を聞いた。勤務先の駐車場でのことだ。少年は四歳くらいで、お...
短編小説 心配屋さん Posted on 2021年3月3日 by 村山亮 / 0件のコメント 「いかがですかぁぁ・・・心配の種いかがですかぁぁ・・・。新鮮な心配の種ですよぉぉ・・・。メキシコから直輸入ぅぅ・・・。無農薬で味も抜群。いかがですかぁぁ・・・」 その不思議な売り子の声を聞いたのはある街を散歩していると...
短編小説 タイムレス Posted on 2021年2月14日 by 村山亮 / 0件のコメント 「当時俺は深刻なテレビゲーム中毒に陥っていた」と彼は言った。 それはどんよりと曇った六月の末のことで、僕らは二人とも二十六歳だった。彼は仕事をしておらず、僕は今勤めている会社をあと二週間で退職しようとしていた。もっとも...
短編小説 マスクマン Posted on 2021年2月14日 by 村山亮 / 0件のコメント 僕は最近いつもマスクを着けている。世間がこんな風なコロナウィルスの騒ぎなのだから、まあ仕方ないといえば仕方ない。接客業だし、お客さんにうつしたり、あるいはうつされたりしても困る。それはそれとして、実は僕の顔もマスクであ...
短編小説 ミスターピスタチオ Posted on 2020年12月9日 by 村山亮 / 0件のコメント その日僕はミスターピスタチオと待ち合わせをしていた。駅前の広場にある奇妙なオブジェの前に午後三時、という約束だった。僕は時間の十分前に到着した。いつもいつも時間に正確というわけではないが、誰かを待たすのは気分が悪い。そ...
短編小説 幽霊 Posted on 2020年7月14日 by 村山亮 / 0件のコメント 昨日の夜部屋に幽霊が出た。 それは白い死装束のようなものを着た、髪の長い女の幽霊だった。どうして幽霊だと分かったかというと、身体が半分透けていたからだ。まるでクラゲみたいに。僕は仕事終わりに一通り筋トレをして(腕立てと腹...
短編小説 夜の爪切り Posted on 2020年5月12日 by 村山亮 / 0件のコメント 昨日の夜爪(つめ)を切っていたら、蛇が出てきた。 それは夜十一時くらいのことで、僕はふと手の爪が伸びていることに気付き、パチパチと切り始めた。床に胡坐(あぐら)をかいて、下にティッシュペーパーを敷き、その上にかつて僕...
短編小説 ウィルス Posted on 2020年4月5日 by 村山亮 / 2件のコメント 時間がウィルスに冒されている、という報道があった。それはいささか奇妙な状況で発せられたニュースだった。記者の名前は公開されていない。あるいは本当は公開されたのかもしれないが、今では削除されてしまっている。空白。空白。 ...
短編小説 ゴリペイ Posted on 2020年1月30日 by 村山亮 / 0件のコメント 「なに? ゴリペイが使えないだと?」 「ええ。申し訳(わけ)ありません。そのようなサービスはうちでは扱っていないんです」 彼はレジの前に並べられた三本入りのバナナ(エクアドル産)と、豆乳バナナスムージーを見つめた。そし...
短編小説 リンボ(辺獄)より Posted on 2019年12月19日 by 村山亮 / 0件のコメント 夕方の最も仕事が忙しい時間帯に電話が鳴った。 「もしもし。どちら様でしょうか?」 「店長、俺っすよ俺」 「ああ、君か・・・というか今何時だと思っているんだ。本当なら三十分前に来て働いているはずなんだが」 「いや、それが...