こんにちは。マスコットのビギナー君です。
さて、みなさん! 六月がやって来ましたよ。ということはつまり……今年が始まって、そろそろ半分が過ぎようとしているわけです。信じられますか? シンジラレナーイ! 僕は時の速さは残酷すぎるとたまに思います。実に、ね。
それはたぶん僕が時間を有効に使えていないからなんでしょう。いやはや。34になるというのに、いまだにポケモン(初期のやつ)にハマったり、あるいは百人一首を全部覚えてやろうと思ったり、あるいはひたすらスクワットをやったりして(膝を痛めた)、あっという間に時間は過ぎ去ってしまいます。そしてふと、あれ、僕の人生って何なんだったっけ? と思うのです。そのときの虚しさときたら!
でも実はほかの人たちもそうなんじゃないかと最近思ってきました。全員じゃないかもしれませんが、大抵の人たちは。みんな「ふり」をしているだけで、本当は空虚なんじゃないかと。そう思うとちょっとホッとしますよね。空虚仲間というか……。
でもそのままではいけません。空虚なのだとしたら、心の穴を埋めなければならないのです。何をやってか? それは……サバイバルです! 
最近そういうYou Tubeばかり観ていました。ということは……僕はきっと原始的な生活を体験したいんだ! ということで、今から山に行ってきます。探さないでくださいね。ナイフ一本で、ほとんど全裸で、なんとか生き延びてみせます! 木の実とか、虫とか、魚とか、葉っぱとか、そういうのを食べて、ギリギリの状態で生き延びて……それでご先祖様たちが何を考えていたのか、体験してみたいのです! ああ、待ち遠しいな……。
なんとか生き延びて、朝が来るたびに感動して、そして少し時間ができたら……芸術を作るのかもしれない。原始的な楽器とか作って。あるいは絵を描いて。あるいは……短歌を詠んだりして……。
ひゅう! 僕はアーティストだ!
ということで、お元気で! くれぐれも真似しないように! それでは!

さて、今年もあっという間に六月が来てしまいました。ジメジメした雨の月。でも私は昔からこの季節が好きでした。なんというのかな、心の暗さにマッチするというのか……。
そう、私は若い頃からなんだか暗いことばかり考えていました。「ひねくれている」と言えばそれまでなのかもしれませんが、みんなが喜んでいると、その反対のことばかり考えてしまうのです。みんなが美しい花を見て喜んでいるとすれば、私はああ、この花だってすぐに枯れてしまうんだよな、と思ったり、みんなが鶏肉を食べて美味しいと言っていたとすれば、ああ、この鶏はいったい何のために生まれてきたのだろう。彼(あるいは彼女)には希望がなかったのだろうか、と思ったりします。
でもその代わりに、みんなが沈んでいるときには、私はウキウキした気持ちになっていました。たしか戦後すぐのときでしたが、不作で農作物が採れない年がありました。みんなは難しい顔をしていました。でも私はウキウキとして、一人で山に出かけて行ったものです。木の実を採ったり、魚を獲ったりして、それなりに楽しく過ごしていました。キノコも美味しかったしね。森にはこんなに豊かな恵みがあるんだ、と私は思っていました。
たしかそのときでしたが、戦前から逃げていた怪しいおじさんに会いました。すごく痩せていて、それでも目がギラギラと光っていました。彼は脱走兵で、いまだに憲兵が自分を追っているのだと思い込んでいました。ヨレヨレの軍服を着て、山奥の誰もいないところにシェルターを作って生き延びていました。
「こんちはおじさん」と子供だった私は言いました。
「なんだ坊主? どうしてこんなところにいるんだ?」と彼は警戒しながら言いました。
「なんでって、村ではみんな沈んでいて、楽しくないからだよ。不作なんだって」
「なるほど。山にいると分からないが、そんなことになっていたのか」
「おじさん、もう戦争は終わったんだよ。これからはミンシュシュギの時代だって先生が言っていた。アメリカは悪者じゃないんだよ」
「へ! そんなことがあるもんか。親父に言われて来たんだろ? きっと。俺を連れ戻そうって魂胆だな。その手には乗るもんか。帰ったらきっと逮捕されて、軍法会議にかけられて、絞首刑だ。俺はここで生きるもんね。俗世間なんかクソ喰らえだ」
「おじさんそんなに世間が憎いの?」
「まあな。俺はあっちが好きじゃないんだ。ここが一番だよ。猪も、熊も、鹿もいる。俺は弓矢でそいつらを狩るんだよ。キノコだっていっぱいあるしな。イワナも鮎もいる。今では芋も植えている。どうして帰る必要がある?」
「お母さんが悲しんでいるかもよ?」
「それは……考えないことにしよう。俺のことなんか非国民だと思っているはずだ。でも俺は兵隊になんかなりたくなかったんだ。あそこにいても殴られるだけだからな。まったくあいつらときたら……」
「じゃあ帰んなくてもいいけどさ、ぼくとちょっと遊ばない?」
「まあそれくらいなら……いいか。ほら、坊主。こっちにいい釣りスポットがあるぞ」
「釣りもいいけど、ぼくはどうしても相撲が取りたいんだけど。さっきからウズウズしている」
「なんだそれならそうと言ってくれればよかったんだ。あっちに平らな場所がある。そっちで相撲を取ろう」
「ウッヒョイ! やった! ぶん投げてやるぞ!」
 ということで我々は200番ほど、相撲を取ったのでした(私の178勝22敗でした。そのうちの13敗はわざと負けてあげたものでした)。
「坊主! お前力が強いな! 将来横綱になれるぞ」
「おじさんが弱すぎるだけだよ。村の五歳児だってもっと強いよ」
「そうか……俺はそんなに弱っていたのか。ここにいると分からないが……」
「でもさ、自然と調和して生きるって素晴らしいね。ぼくは実にそう思うよ」
「ふむ。その通りだ。なんか心がスッキリするんだよね。……ということで、いつか俺が死んだら、ここでの生活をみんなに知らせてくれよ。ブログかなんかでさ」
「仕方ないなあ」ということで、彼の生活をここで書いたわけです。みなさん、もちろん自然は素晴らしいですが、厳しい場所でもあります。毒キノコもあるし、虫もすごいし、水にはバクテリアが潜んでいることもあります。嵐は苛烈です。あなたは森の一部であり、同時にまた、森の一部ではありません。いずれにせよ、すごく重要な経験ができることは確かですが。ぜひお気をつけて。それでは。お元気で。

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