白い部屋 (3)

『白い部屋 (2)』の続き   気付くと僕はあの白い部屋に戻っていた。壁の揺れはすでに完全に収まっていた。僕は一人ベッドに腰掛け、左手には例のプラスチックのスプーンを力強く握り締めていた。今見た不思議な幻想につ...

白い部屋 (2)

『白い部屋 (1)』の続き   気付くとすでに移動は完了していた。僕は今一つの視点となり、一人の男の姿を見つめている。いや、違うな、とすぐに思い直す。僕は視点なのではなく、一つの壁になっているのだ。生きている壁...

白い部屋 (1)

それは白い部屋だった。もうしばらく前からここにいる。広さは六畳ほどで、隅の方に鉄製のベッドがある。その反対側には小さな仕切り板があり、奥にむき出しの便器が設置されている。そちら側の壁の上部には手洗い用の小さな水道が付いて...

救出

今日僕は居残りを命じられた。宿題だった漢字練習のプリントを家に置き忘れてきてしまったのだ。よりによってこんな日に。というのも、いつもはクラスに何人かほかにも忘れる人がいるのだが、なぜか今日に限ってそれを持ってこなかったの...

死の来訪

天気の良い土曜日の午後二時、部屋で気持ち良くうたた寝をしていると、突然ドアベルが鳴った。僕はまだ半分夢の世界にいながら、その音を聞いていた。それは最初遠い汽笛のように聞こえたが、やがて耳障りな女の叫び声になり、最後にはま...

墨田川 3

(『墨田川 2』の続き)   その1週間後、また彼が僕の部屋にやって来た。時刻は午前3時だった。彼はまたしても海水パンツにシュノーケル付きのゴーグルという格好だった。僕はひどく眠かったものの、今度は自分から彼の...

隅田川 2

(『隅田川 1』の続き)   その1週間の間中、彼が書いた酔っぱらいの姿が、僕の中で何度も浮かんだり消えたりしていた。彼は太平洋を突っ切って、その自己流のクロールで金色のウィスキーの流れを追い続けていた。それが...

墨田川 1

「一体どうして神田なんだ?」と僕は言った。   「だって古本屋街があるだろう」と彼は言った。「当然じゃないか」   でも僕にはそれがさほど当然なことだとは思えなかった。というのも場所なんて関係ない、と...

第二次ポエニ戦争

ふと目を覚ますと、隣には第二次ポエニ戦争が眠っていた。私は恐る恐るその肩をつついてみたのだが、彼(あるいは彼女)は全然目を覚まさなかった。一体何が起こっているのだろう、と思ってあたりを見回したが、部屋には普段と変わったと...