死について 2

『死について 1』の続き   会社で仕事をしている間にも、僕は彼のことを考え続けていた。果たして本当に彼の言った通りなのだろうか? 彼の右腕は、実際にほかの誰かのものと取り換えられていたのだろうか? もちろん常...

死について 1

「さっきまで死のことを考えていた」と彼は言った。僕は何も言わず、ただその続きを待っていた。電話越しに聞こえる彼の側がわの沈黙は、なぜかひどく重たく感じられた。   「実を言うと今日一日ずっとそのことを考えていた...

ワニ

朝起きると私はワニになっていた。といっても姿形すがたかたちがワニになったわけではない。あくまで意識がワニになったということだ。もちろん今このように回想できていることからして、100パーセント完全なワニになったというわけで...

口内炎に寄せる哀歌

「口内炎に寄せる哀歌あいか」   ああ口内炎、口内炎 三つもできた口内炎 右と、左と、舌の上 白く固まり、そこに居座る   彼らは 戦時中の日独伊三カ国のように ごく実利的に結びついている その目的は...

マグカップの虐殺

『マグカップの虐殺』   粉々になったマグカップ 白い スヌーピーの絵が印刷されたマグカップ 一年かそこら 勤めを果たし 今日 午後2時30分 持ち主の手によって 破壊された   もちろん意図したわけ...

ゴリラの生る木

ぼくは今日おつかいを頼まれた。丘の上にあるゴリラの生なる木のところに行って、「小さいゴリラ」と、「中くらいのゴリラ」と、「大きいゴリラ」を摘んでくるよう言われたのだ。   「あなたももうそれくらいはできないとね...