生きている者だけのための資格

生きている者の間だけで譲渡される資格があって

生きている者の間だけで譲渡されるがあって

生きている者の間だけで譲渡されるがあって

生があって

死があって

そしてあなたがいる

死んだ者だけが理解できる言葉があって

死んだ者だけが理解できる歴史があって

死んだ者だけが直視できる太陽があって

詩があって

性があって

そして僕がいる

、と鼓動が鳴って

心臓の鼓動が鳴って

僕たちは

生きている

らしいね

たぶん

生きている者だけのための世界は

生きている者だけのための時間性の中で

生きている者だけのための音楽を(かな)

生きている者だけのための言葉を語る

ゲーテが

シェイクスピアが

夏目漱石が

語った

ほら

そこで・・・

生きている者だけのための世界は

生きている者だけのための岩石によって

厳重に

守られている

動物と子どもたちだけのための世界は

なんにも守られずに

なんにも縛られずに

自由に羽ばたいていく

ほら

今ここで

風が吹いた

透明な風が・・・

僕が僕であることの資格は

さっきから揺れ動いている

僕は実のところ

生まれた瞬間から

こうして震えてきた

ブルブルと

あるいはカタカタと

それはあなたも

一緒

夢で見た

世界の(はし)にある

橋の上に

一人の男が

いる

彼は自分の順番を待っているけれど

いつそれがやって来るのかは

誰にも分からない

そう、神様にも

、とまた鳴った

ほら、僕は今ここにいる

あなたが今そこにいるのと同じように

僕は今ここにいる

、とまた鳴った。

、とほら、ね

生きている者だけのための世界は

生きている者だけのための重みを持って

生きている者だけのための苦しみの中を

生きている者だけのための哀しみを背負って

泳いでいく

どこまでも

ずっと

死がやって来るまで

村山亮
1991年宮城県生まれ。好きな都市はボストン。好きな惑星は海王星。好きな海はインド洋です。嫌いなイノシシはイボイノシシで、好きなクジラはシロナガスクジラです。好きな版画家は棟方志功です。どうかよろしくお願いします。

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