生きている者の間だけで譲渡される資格があって
生きている者の間だけで譲渡される時間があって
生きている者の間だけで譲渡される穴があって
生があって
死があって
そしてあなたがいる
死んだ者だけが理解できる言葉があって
死んだ者だけが理解できる歴史があって
死んだ者だけが直視できる太陽があって
詩があって
性があって
そして僕がいる
ドクン、と鼓動が鳴って
心臓の鼓動が鳴って
僕たちは
生きている
らしいね
たぶん
生きている者だけのための世界は
生きている者だけのための時間性の中で
生きている者だけのための音楽を奏で
生きている者だけのための言葉を語る
ゲーテが
シェイクスピアが
夏目漱石が
語った
ほら
今
そこで・・・
生きている者だけのための世界は
生きている者だけのための岩石によって
厳重に
守られている
動物と子どもたちだけのための世界は
なんにも守られずに
なんにも縛られずに
自由に羽ばたいていく
ほら
今ここで
風が吹いた
透明な風が・・・
僕が僕であることの資格は
さっきから揺れ動いている
僕は実のところ
生まれた瞬間から
こうして震えてきた
ブルブルと
あるいはカタカタと
それはあなたも
一緒
夢で見た
世界の端にある
橋の上に
一人の男が
いる
彼は自分の順番を待っているけれど
いつそれがやって来るのかは
誰にも分からない
そう、神様にも
ね
ドクン、とまた鳴った
ほら、僕は今ここにいる
あなたが今そこにいるのと同じように
僕は今ここにいる
ドクン、とまた鳴った。
ドクン、とほら、ね
生きている者だけのための世界は
生きている者だけのための重みを持って
生きている者だけのための苦しみの中を
生きている者だけのための哀しみを背負って
泳いでいく
どこまでも
ずっと
死がやって来るまで