隣人
それは気持ちの良い九月の土曜日だった。午後二時で、僕は昼食を食べた後腹ごなしに近くの公園に散歩に来ていた。僕はいつも座る指定席のベンチに腰掛け、ポケットから文庫本を取り出して読み始めた。何分か経ったあと、ふと顔を上げると...
それは気持ちの良い九月の土曜日だった。午後二時で、僕は昼食を食べた後腹ごなしに近くの公園に散歩に来ていた。僕はいつも座る指定席のベンチに腰掛け、ポケットから文庫本を取り出して読み始めた。何分か経ったあと、ふと顔を上げると...
今日は朝から雨だ そんなに 強い 雨じゃない でも雨は雨だ 雨の音は 聞いていると なぜか 落ち着く それは 高度何フィートだかから 落ちてきて 今 僕の部屋の窓枠(まどわく)に落ちた それは長い旅なのか それとも 瞬(...
Virgil Anderson (バージル・アンダーソン) (1890-1938) 作 “In this country of pain and sorrow” (『この痛みと悲しみの国で』) の翻訳 この痛みと悲しみの...
二本の平行線の間に僕はいる 上の線が風で下の線が水だ 僕はその二つの流れのちょうど真ん中にいて ただ移動している 二本の平行線はどこまでいっても交わらないらしい 上の線が風で下の線が水だ 僕はその二本の透明な直線の間にい...
春は匂(にお)やかな風 蠢(うごめ)く虫と それを啄(ついば)む鳥 肌に感じる生温かい空気 地面に広がる クローバー 我々は生きている 梅雨(つゆ)は灰色の空 ナメクジと 濡れたアスファルト 水たまりを踏む 車の音 雨は...
彼は自転車に乗って、一晩中都心に向けて走り続けていた。走り続けていればあれから逃れられるのではないかと思ったからだ。なぜ都心なのかは分からない。目的地なんてどこでもよかったような気もする。しかし走り続ける以上どこかに向か...
彼女はもう長年魔女をやっていて、そのとき大きな鍋の中身を木べらでかき回しているところだった。その中身が何なのかは分からなかったが、辺りにはなかなか良い匂いが漂っていた。 「蝦蟇がまの胆嚢たんのうとか、トカゲ...