11月のある晴れた月曜日の午後にアップルパイを焼くことについて

昨日は文句なしのアップルパイ日和びよりだった

日曜日で、空は青く晴れ渡っていた

雲一つない

空気は乾燥していて、温かく、すべての生命を祝福していた

そういう日には人はアップルパイを焼かなければならない

たとえどのような用事があったとしてもだ

ということで僕はアップルパイを焼くことにした

ちゃんと生地きじから作って

強力粉と薄力粉

バター(200グラム)

冷水

リンゴをむいて

ついでに洋梨も入れた

ラム酒の香り

シナモンの香り

世界は我々を祝福している

しかし僕にはほかに仕事があるし(小説を書かなければならない)

それにクッキングペーパーと、ほかにもいくつかの材料がそろっていなかった

さらにいえば、時間もかなり遅くなっていた

ということで月曜日の今日

アップルパイを焼いている

残念ながら今日は昨日ほど天気が良くない

空気もすべての生き物を祝福しているわけではない(ごく一部だ)

しかし細かいところを気にしている場合ではない

なにしろもう生地きじはできているし

煮られたリンゴは、その上に載せてもらうのを今か今かと待っているからだ

今日は正直なところアップルパイ日和びよりではないだろう

どちらかというとアジの干物日和だ

しかしすべての条件が揃うということは人生においてめったにない

僕はこれまでの人生においてそのことを嫌というほど思い知らされてきた

かつてレイモンド・カーヴァーはソーダクラッカーについての詩を書いた

そして自分がソーダクラッカーについての詩を書けることを心から感謝し、喜んでいた

一方僕はアップルパイについての詩を書く

生地きじから作った手作りアップルパイを

そんなことを言っているうちにほら

そろそろ焼き上がる時間だ

バターの良い香りがただよってくる

ふと、生きることもそれほど悪くないのかな、と思ったりする

でもまあ、細かいことはもういいだろう

そろそろ行くべき時間だ

どこへ?

そればかりは行ってみないと分からない

実際に辿たどり着いてようやく

自分が何を求めていたのかを知るんだ

いつだって同じさ

まあ

あとでちゃんと報告するよ

とりあえずアップルパイを食べたあとでね

2018年11月26日、自宅にて

村山亮
1991年宮城県生まれ。好きな都市はボストン。好きな惑星は海王星。好きな海はインド洋です。嫌いなイノシシはイボイノシシで、好きなクジラはシロナガスクジラです。好きな版画家は棟方志功です。どうかよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です