七月の空は青く高くて
どこまでも遠くへと続いているように
見える
でもそれはたぶん気のせいで
六月の空が雲に覆われていたからだろう
積乱雲がモクモクと
モクモクと
モクモクと
上に向けて発展していって
やがては雨を落とす
雷が鳴る
雷が鳴る
雷が鳴る
時が流れて
時が流れて
やがて七月も終わるだろう
でもまだ続いている
今年の七月は
まだ続いている
僕は
僕らはそれを知っている
あらゆる歴史の先端に
僕らはいる
ナポレオンもヒトラーも
キリストもブッダも
北条義時も松尾芭蕉も
みんな後ろの方に消えてしまった
記憶が堆積した
砂浜を
ときどき想像する
僕は熊手でそれを掘り出す
意外なものが出てくるかも
錆びたコイン
どこか外国のものだ
それを手に取り
光にかざす
太陽は明るく輝いている
いささか明る過ぎるくらいに
今風が吹いたことを感じている僕は
たぶん生きているのだと思う
明日
もし世界が終わったら
僕らが最も新しい人間だったということになる
記念に何か残そうかな
詩とか
歌とか
誰がそれを鑑賞するわけでもないのだけれど
ゴォーンという音が鳴って
ゴォーンという鐘の音が鳴って
死が
世界に穴を開ける
僕はただそれを見ている
あなたもまた
それを見ている
視界の端で
僕はそれを知っている
我々はみな何かを恐れている
何か恐ろしいものを見ることを
僕はここにいて
グルグルと回り続けている
もう五年間も
ずっと
さて
ここにあるのは何なんだろう?
世界か
自分自身か
それとも・・・
夜はっと飛び起きて
ついさっきまで自分が死んでいたことを知る
そこには何もなかった
「何もなかった」すらなかった
無
無
む
む
明日
というのは誰かが付けた名前で
本当は違うものなのかもしれない
僕は「今日の次の日」に
「ジョン」という名を付ける
そしてその次の日に
「小次郎」という名を付ける
さて、ジョンと何をしようかな
小次郎とは何をしようかな
太陽を
「ペガサス」と名付ける
そろそろ世界ができあがってきたぞ
よしよし
最後に僕は
自分自身に名前を付ける
でもそれは秘密だ
死んだら教えてあげる
それまでは
ポップコーンでも食べて待ってなよ
ちょうど映画もやっているしさ
題は「君の人生」
終わったら
電話してよね
番号は・・・
ジョン:俺は所詮概念のようなものだ。実際には誰にも会ったことはないのだから。
小次郎:そういう点でいえば俺も一緒だ。あるいは一日遅い分、君より美しいかもしれないが。
ペガサス:私はピカピカと光っているが、常に孤独だ。だって誰も近寄ることはできないのだから。
ジョン:あなたは最近何かに怒っていないか?
ペガサス:私が?
ジョン:だって夏があまりにも暑過ぎるから。
小次郎:まあ我々は概念に過ぎないから、実際には何も感じたりはしないのだが。
ジョン:テレビで観たんだ。いろんなところが暑くなっている。
ペガサス:どうかな。自分ではそうは思っていないんだがね。あるいは何かに怒っているのだろうか?
ジョン:うーん。
小次郎:うーむ。
ポップコーン:ポップポップ! ポップポップ! コォォーン!
ペガサス:うるさい!
ポップコーン:ポップポップ! ポップポップ! コオォォォォーン!!
ジョン・小次郎:うるさい!
ペガサス:は! 私はあるいは、ポップコーンのうるささに怒っていたのかもしれない・・・。これからはもっと冷静になろう。キンキンの冷蔵庫みたいに。
ジョン:プルルルル。プルルルル(と電話が鳴る)。はい? もしもし。え? きよみちゃん? 今日会う約束していたっけ? 参ったな。ちょっと用事があってさ。え? 何かって? それはね・・・
小次郎:(電話を奪い取って)もしもし? きよみさん? ねえ、我々は実は永遠に会うことはできないんだ。なぜなら僕らは概念だからだ。いつも「次の日」なんだ。実際にやって来ると、もう別のものに変わっている。一日分後ろに押し出されるんだよ。分かるかい? だから君が今まで愛していたと思っていたのはジョンじゃない。別のものだ。その名前は・・・。
ポップコーン:ポップポップ! コオォォォォォォーン!!
全員:うるさい!!