忘却装置

「忘却装置」というものがあると便利だよな、と私は常々思ってきた。 「忘却装置」というのは要するに、都合の良い記憶を――つまり覚えていると都合の悪い記憶、という意味だが――ピンポイントで消せる装置のことである。たとえばあな...

靴紐たちの世界

毎日毎日毎日毎日・・・たくさんの靴紐(くつひも)たちが、結ばれているのです 雨の日も雪の日も、嵐の日も(もちろん快晴の日にだって)靴紐たちは結ばれているのです 彼らは何を考えているのでしょう? 靴の主(ぬし)のことを考え...

新しい夢

新しい夢を見るために、私は今日目覚めてきたのです 新しい響きを辿るために、私は今意識を保っているのです 昨日嗅いだ、排気ガスの臭いが、まだ記憶の扉を、叩いているのです あなたは、今そこにいて、何を見ているのでしょうか? ...

2023年、新しい年。

 明けましておめでとうございます。2023年です。まさかこんな年がやって来るとは誰が予想できたでしょう? まあみんなできたか・・・。とりあえず生き延びてさえいれば一月(いちがつ)には新しい年がやってきます。それが自然のサ...

モロヘイヤ夫人

「モ、モロヘイヤ夫人!」と僕は言った。彼女に会うのは実に30年ぶりのことだった。当時僕はまだ生後六ヶ月くらいの小さな赤ん坊だったのだが、彼女はペースト状にしたモロヘイヤを無理矢理(ミルクに混ぜて、だが)僕に飲ませようとし...