私が私であったとき

私が私であったとき あなたはあなたではなかった あなたがあなたであったとき 私は私ではなかった 世界が世界であったとき 闇は光ではなかった 世界が世界であったとき 死は愛ではなかった 青は青で 赤は赤だった 空気は空気で...

新しい世界

僕は新しい世界に生きている 新しい世界にはルールがない 新しい世界には人がいない 新しい世界には風が吹いている 新しい風が 新しい世界には孤独がない 新しい世界には言葉がない 新しい世界には死がある しかしそれは絶望では...

靴紐たちの世界

毎日毎日毎日毎日・・・たくさんの靴紐(くつひも)たちが、結ばれているのです 雨の日も雪の日も、嵐の日も(もちろん快晴の日にだって)靴紐たちは結ばれているのです 彼らは何を考えているのでしょう? 靴の主(ぬし)のことを考え...

新しい夢

新しい夢を見るために、私は今日目覚めてきたのです 新しい響きを辿るために、私は今意識を保っているのです 昨日嗅いだ、排気ガスの臭いが、まだ記憶の扉を、叩いているのです あなたは、今そこにいて、何を見ているのでしょうか? ...

一人の盲目の詩人が

一人の盲目の詩人があちらの世界へと移動するのだが 彼はその事実に気付かない あちらの世界とは死者の世界だ 黒い太陽が地表を照らし 死んだ風が吹き渡る 海は澱(よど)み 川は流れない 時計塔は 同じ時刻を指し続けている 盲...

今ここにいる俺は

今ここにいる俺は 昨日の俺とは違っている それがたぶん 結構重要なこと 今ここにある夢は 昨日の夢とは違っている それもたぶん それなりに重要なこと 君はそういえば 昨日 ほとんど生きる意味がない、って言っていたけど 「...

君はあの夕空を見たか

君はあの夕空を見たか 夏の高い空間にモクモクと雲が湧き上がって その奥から太陽が 我々を照らしている あの光景を見たか? 雲の下には影があり 雲の奥には空気の渦(うず)があり その下に鳥が飛び 我々がいる その光景を見た...