第二十九回文学フリマ東京(結果報告)

さて結果報告です。睡眠不足の頭(と意識)を抱え、大田区平和島にある東京流通センターへ。二人ともいい加減な人間なので、ぐずぐずしているうちにあっという間に開場10分前になっている(近くのコンビニでコピーを取ったりしていました)。まったく。いつもこうなんだから・・・。その時点ですでに会場は人々で賑わっている。中にいるのは出店者たちなのだが、一般来場者の方々も列を成して並んでいる。

とりあえずパンフレットをもらって、うろうろしながら自分たちのブースを探す。しかし広くてなかなか見つからない・・・。ようやく辿り着いたときには会場5分前くらいになっている。その間ほかの出店者の人たちの本が(否応いやおうなく)目に入ってきたのだけれど、みなさんかなり立派な装丁そうていの本を売っています。これ本当に個人の出版物か・・・? 実をいうとその時点で我々二人ともかなり焦っています。自分たちのこの程度の本で大丈夫なのだろうか・・・

しかしまあ、今更焦ったことで仕方がありません。あるものでなんとかやっていくしかない。ということで、とりあえず描いてきたポスターを前面に貼り、値札を立てて、肝心の冊子を積み上げます。ふう。なんだか冷や汗が流れてきたな・・・。

真ん中にあるカップには、空白がたくさん入っています。それは僕の胃をひたひたと満たしていくのでした・・・。

そんなこんなでバタバタしているうちに11時の会場時間がきてしまう。バタバタバタバタ・・・。隣のブースの方々にはちょい迷惑だったかも・・・。でもなんとか落ち着いて、宮田氏と二人で並んでパイプ椅子に腰掛け、お客さんがやって来るのを待ちます。ちょくちょく足りないポップとかを書きながら、ひたすら待ちます。中にはCDを売っている人や、すごく綺麗なポスターを看板替わりにしている人もいて、自分たちのブースがものすごく貧相に見えてきます。でも何度も繰り返すようですが、とにかくもうあるものでやっていくしかない。

さて、そんな感じで時が過ぎていきます。見本みほん本をそのコーナーに置いたし、チラシも置いてきました。やれることはやったのですが、なかなかお客さんが来ない。いや、近くには来ているのですが、みんなスルーしていきます。あるいは前面に貼った曼陀羅まんだらがまずかったのか・・・。交代でトイレに行ったり、宮田氏はタバコを吸いに行ったりして、店番をします。そんなこんなでお昼が来てしまう・・・。

彼にブースにいてもらって、外でチキンなんたらの入ったナンを食べているときに、そうだ、もっとずっと安くして最悪の事態だけは避けよう、と決意しました。でもそのあと戻ってみると、どうやら彼によれば一冊売れた、ということでした。ううむ。だとするとその人のためにも――なんだか申し訳ない気がするので――とりあえずしばらくはこの値段のままいくか(ちなみに300円です。はい・・・)。

さて、そんなこんなで時間は過ぎ、その間に幸運にも何冊かは売れました。しかし全体で見れば――あまり大きい声ではいえないのですが――惨敗です・・・。今宮田氏に聞いてみたのですが、「惨敗よりはちょっと良いくらいじゃないか」と言っています。まあどちらにしろ似たようなものです。でも正直にいって、僕はあまり後悔していません。まあこんなものだろう、と――さすがにもうちょっと売れるかなとは思っていましたが――あらかじめ覚悟していたからです。良い勉強になったと思ってこれから頑張るしかない。

在庫の段ボールと、僕の足です。ちょっと長くなった、というのは嘘です。はい・・・

でも、これはちょっと言い訳に聞こえるかもしれませんが、おそらくほかの純文学系の出展者も大半はあまり売れなかったのではないか、と思います。帰りに在庫の山を段ボールに入れている姿を見ていて――もちろん我々もその一員です――そう感じました。なんだ、みんな一緒じゃないか、と都合よく自分(たち)を励まして、今カラオケ屋にいます。

しかしその中でも嬉しかったのは、サイトを見てくださった方々が――数人ですが――いらして本を買ってくださったことです。なんだか無駄にドキドキしてしまった。穴があったら入りたくらい・・・というのは冗談ですが、あまり心臓にはよろしくないですね。でもとても感謝しています。どうもありがとうございました。

さて、ということで、ようやく心配していたイベントが終わりました。正直こんな感じになるだろうとは分かっていたとはいえ、冊子が出来上がった段階の高揚感(お客さんいっぱい来たらどうしよう・・・。本足りるかな?)、そして売れない状況の中の一種の達観した感じ(ハハハ、もはやなんとでもなれ・・・)。

それらの一つ一つを物理的に体感できたというのはかなり貴重な経験だったと思います。これに関してはまあ、今回の企画者の宮田氏に感謝しなければなりません。たしかにずっと同じ街に留まっていては、こういう経験はなかなかできなかったでしょう。でも本当に正直にいうと、次があるか、といったらないと思う。僕はもっと自分自身の基礎能力を上げる、ということの方にエネルギーを注ぐべきだと感じるのです。それは本能的なものです。

いずれにせよ、今回の赤字分はいつか彼に補償しなくちゃな、と思っているところであります(その彼は今一人で歌を歌って、「こりゃ駄目だ」とか言っています)。まあでもたぶん、今回あまり売れなかったことと、職業的作家になれないことの間にはあまり相関関係はないような気がする。とにかく人間として成長すること。そして可能な限り正直な文章を書くこと。僕の信念はほとんどそれだけです。たまにそれ以外のこともやりますが。

P.S. ちなみに買ってくださった方、買わずともチラシを持っていってくれた方はほぼ全員若い男性の方でした。まあそれはそうだよな、と思う部分もありますが、そういう読者層の腑分けというのも結構面白いものです。女性の方にも立ち読みはしてもらったのですが、買ってはもらえなかった・・・。でもまあ、そのうちなんとかなるでしょう。

それでは。あとは帰って寝ます。

村山亮
1991年宮城県生まれ。好きな都市はボストン。好きな惑星は海王星。好きな海はインド洋です。嫌いなイノシシはイボイノシシで、好きなクジラはシロナガスクジラです。好きな版画家は棟方志功です。どうかよろしくお願いします。

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