海が
僕の前に
広がっていて
どこまでも
海が
広がっていて
僕は
海の
上に立っていて
風が
吹いて
カモメが
白い
カモメが
飛んで行った
どこへ?
どこかへ
どこか遠くへ
海が
青い
海が
やはり
広がっていて
僕は
その上に
立っていて
波が
起こって
僕も
揺れた
潮の
香りが
漂ってきて
魚が
僕の下で
泳いでいる
闇が
深い
闇が
僕の後ろに
迫って来て
暗い手を
その
暗い手を
僕の肩に
かけた
でも
僕はそのとき
風になっていて
闇の手は
何も掴むことができない
そのとき
僕は
そのとき
風になっていて
闇の手は
何も掴むことができない
僕は
海の
広い海の
上を
吹き渡っていて
カモメが
白い
カモメが
僕のすぐ脇を
通り過ぎて行った
ねえ
どこに行くの
と
僕は聞いた
でも
カモメは
カモメ語で何か言っただけで
僕には何も分からない
遠くの方に
太陽が見えて
それは
燃えている
それは
激しく
燃えている
僕はそのとき
風になっていて
透明な
風になっていて
太陽が
赤い
太陽が
送り出す
粒子と
混ざり合って
やがて
消えていった
海には
クジラがいて
大きな
クジラがいて
クジラ語で
何かを言った
僕は
そのとき風になっていて
透明な
風になっていて
赤い
太陽が燃えて
白い
カモメが
飛んで行った
どこか遠くに
ずっと遠くに
僕は
赤い
太陽が送り出す
光の粒子と
溶け合って
やがて
地球を満たす
そして
なんにでもなる
たぶん。