もう誰もいなくなった
夢を見るものさえいない
もう誰もいなくなった
草を食む者さえいない
もう誰もいなくなった
お前は誰なのか、と訊ねる者もいない
もう誰もいなくなった
神の姿を探し求める者もいない
風が吹いた
何もない荒野の上を
闇が死んだ
何もない海の真上で
いまや鳥さえいない
虫もいないし
魚もいない
植物は干からびて
その辺に転がっている
私は石に祈る
二億年の歴史を持つ石に
それに比べたら
人間の歴史なんてたかがしれたものさ
マントルが溶け出して
新しい星を作る
月のちょうど真横のあたりに
私の影は
そこから
死にゆく地球を眺める
鼻唄を歌いながら