あなたはあなたの言葉を耳にする
私は私の言葉を耳にする
そこには何か心温まるものがある
たしかに
しかし同時に肌寒くなるものもある
「心温まるものがある」というのはつまり、あなたが何かを手にする、ということを意味する
「肌寒くなる」というのはつまり、あなたが何かを失う、ということを意味する
その二つが同時に存在している
私はときどき、宇宙はあまりにも不親切ではないか、と思うことがある
なぜならいろいろなものがあまりにも不明確だからだ
そもそも宇宙の果てとはどこにあるのだ?
あなたには答えられるだろうか?
自分が一体どんな世界に住んでいるのか?
もっとも現実的観点からすれば、そんなことはどうでもいいのかもしれない
明日も仕事があるし、今日は早く寝なければならない
息子は風邪をひいていて、もしかしたらインフルエンザかもしれない
確定申告の書類を用意する必要だってある
エンジンオイルは交換しただろうか?
靴下の親指のところには、穴が開きかけている・・・
私たちの生とは一体何なんだろう、と私は思う
朝コーヒーを飲み
昼コーヒーを飲み
夜にビールを飲む
あなたはタバコを吸うかもしれない
吸わないかもしれない
あるいは最近IQOS(アイコス)に替えたのかもしれない
でもそんなことはどうでもいい
「どうでもいい」というのが大事なところだ
もちろん小学校の先生はそんなことは言わなかった
みんなに価値があるとかなんとか、そんなことを言ったはずだ
たしかに産業的価値はある
労働者としての
それはともかく、今のことだ
今私はなぜか生きていて、宇宙のことを考えている
あの広くて、果てのない宇宙のことを
かつての記憶がふいに蘇ってくる
私は十歳くらいで、小学校の中庭で仰向けに寝転んでいる
昼休みで、みんなは元気に遊んでいる
私はひねくれていて、「休み時間」は休むべきだとか言っている
あと二人くらいの友達を連れて
私たちは三人揃って寝転んでいる
雲が太陽を隠している
でもやがて風に流されて
それは移動するだろう
まるで空そのものが動いているみたいだな、と私は思う
そしてそう口に出して言う
でも友達二人はちゃんと聞いてくれない
彼らは遊びたくてたまらないのだ
我々はやがて立ち上がり
何かをする
何か子どもらしいことを
十歳の子どもが普通やるようなことを
雲はすでにどこかに行ってしまった
太陽は再び姿を現した
でもそれはさっきまでと同じ太陽ではない
私はそれをちゃんと知っていたし
今でも知っている
風の匂いが鼻腔を刺し
私は一瞬、私ではなくなる
私は記憶の中をさまよい
やがてまた戻ってくる
しかしそれはさっきまでの私と同一ではない
たしかに似てはいるが
重要なところが違っている
私は自分が移動であることを知る
もちろん風もまた然り
いつか人生を祝福できたらな、と私は思う
心から思う
今はこんな状態だけれど
いつかずっと先にはきっと・・・
私は芋虫のように先に進み
ときどき寝がえりを打ちながら
運命と闘い続けるだろう
あの酷薄な運命と
もしかしたら
私の鼻唄が
あなたには聞こえるかもしれない
風に乗って
そちらまで届くかもしれない
そのときはよろしく
あなたも一緒に歌ってくれるといいのだが
2020年2月19日、水曜日。自宅にて。