台風さん

 この間台風が家にやって来た。23号だということだった。秋で、気持ちの良い風が吹いていた。たしかに西の空にどんよりとした雲がかかりかけてはいたが、まだ雨の気配はない。それは日曜日の午後3時のことだった。僕は部屋で一人でド...

奇妙な一週間

 勤務先のお店がコロナウィルスの感染者が出た影響で休業となり、その結果僕はとても奇妙な一週間を送ることになった。  いや、最初はオリンピックだったのだ。酷暑の中開催された東京オリンピック。僕は最初の招致の段階から実は反対...

素晴らしく美しきもの

素晴らしく美しきもののために僕は祈る 素晴らしく美しきもののために僕は祈る 素晴らしく美しき君のために僕は祈る 素晴らしく美しき夢のために僕は祈る      素晴らしく美しき神のために僕は語る 時が 流れて 時が 無情に...

裸の王様

王様:ああ裸って楽しいな! うっきうきしちゃうな。ルンルンルン・・・。 従(じゅう)僕(ぼく)アレクセイ:あ! 王様! また裸になって! ちょっと油断するとこうなんだから、もう・・・。 王様:お、アレクセイ! 君も来たか...

七月の青空

七月の空は青く高くて どこまでも遠くへと続いているように 見える でもそれはたぶん気のせいで 六月の空が雲に覆われていたからだろう 積乱雲がモクモクと モクモクと モクモクと 上に向けて発展していって やがては雨を落とす...

七夕の夜

「やあ織姫(おりひめ)さん」 「彦星(ひこぼし)さん! ねえ、遅かったじゃないの。もうあと二時間しか残されていないのよ! 一体何をしていたの?」 「いやあ遅かったって・・・二時間もあれば十分じゃないか。なあ?」 「ねえ、...

早口言葉の国

「かえるピョピョピョピョ・・・三(み)ピョピョピョコ・・・。ねえ、お母さんこれって難しいね」 「そうだね。もっと頑張って言えるようになろうね」  という親子の会話を聞いた。勤務先の駐車場でのことだ。少年は四歳くらいで、お...

退屈さについて一言

「退屈さ」に関しては、特にあらためて考える必要もなくて、ちょっとまわりを見渡せば、いくらでも見つかる、という意見に僕は賛成です(もっとも誰かがそう言ったわけではなくて、あくまで僕が一人で――頭の中で――知らない誰かと問答...