擦り減った靴に寄せる賛歌

僕は今日靴を買った ランニングシューズと普段履くためのスニーカー よって 今まで履いていた二足の靴を 葬(ほうむ)ることになる 僕は彼らに感謝しなければならない ミズノの黒いランニングシューズ 及び トップサイダーの紺色...

訓示

夜空に輝く星を見なさい その表面に穿(うが)たれた穴を見つけなさい 心を砕いて、水に溶かしなさい 安いアルコールの匂いを嗅ぎなさい 車窓を流れゆく、街の人々のことを思いなさい 曇天(どんてん)を愛しなさい アスファルトに...

もう誰もいなくなった

もう誰もいなくなった 夢を見るものさえいない もう誰もいなくなった 草を食(は)む者さえいない もう誰もいなくなった お前は誰なのか、と訊(たず)ねる者もいない もう誰もいなくなった 神の姿を探し求める者もいない 風が吹...

静寂

死に絶えた街の響き 息絶えた虫の鳴き声 時は消えた 僕はそれを知っている 夢を粉々に割って できた破片で 僕は空を作ろう そこには雲が浮かんで 我々の日々を無気力に照らすだろう 僕の歌は君の耳に届かない けれど、少なくと...

ニュートンの揺りかご

ニュートンの 揺りかご 行ったり来たり 行ったり来たり 鉄球の 振り子 行ったり来たり 行ったり来たり 戻って来るのは同じ場所 反対側と同じ場所 でもほんとはちょっと違う場所 ニュートンの 揺りかご 行ったり来たり 行っ...

雨の音

雨の音に耳を澄ます 夜九時 通り過ぎるタイヤの音 遮断機が下りて 電車が走り抜ける 僕はここにいて 一人ここにいて これまであったことを振り返っている なにもかも小さなことのような気がするし なにもかも重要なことであるよ...