もし哀しみが

もし哀しみが背中に貼り付いて取れなくなってしまったなら もし哀しみがあなたの背中にぴったりと貼り付いて まったくもって取れなくなってしまったなら あなたはとことん哀しんで 夜が明けるまで哀しんで あらゆる世界の屋根が涙で...

愛の戦場

さて、僕はこうしてここに座って 夜十一時に机の前に座って 詩を書こうとしている 誰も読まない詩を さて、時はこうして流れ去って ぐるぐると、あるいはするすると、流れ去って 夢を押し流そうとしている 海の彼方に向けて 海 ...

素晴らしく美しきもの

素晴らしく美しきもののために僕は祈る 素晴らしく美しきもののために僕は祈る 素晴らしく美しき君のために僕は祈る 素晴らしく美しき夢のために僕は祈る      素晴らしく美しき神のために僕は語る 時が 流れて 時が 無情に...

七月の青空

七月の空は青く高くて どこまでも遠くへと続いているように 見える でもそれはたぶん気のせいで 六月の空が雲に覆われていたからだろう 積乱雲がモクモクと モクモクと モクモクと 上に向けて発展していって やがては雨を落とす...

四月は残酷な月

四月は残酷な月 どろどろと 血が流れて どろどろと 血が流れて 私は あなたの顔を見る あなたは そこにいて でも本当は そこにいない 一瞬ごとに あなたは変わり 一瞬ごとに 私も変わる 四月は残酷な月 暖かい風が吹いて...

亡霊

日曜日の午後 殺された兵士の亡霊がドアを叩く 僕は昼寝から目を覚まし 彼のところに行く もしもし と彼は言う 私の記憶はどこに埋もれているんでしょう? そんなことは分からない と僕は言う でもたぶんきっとここじゃないです...

呼吸

僕はここにいて、呼吸をしている 君はここにいて、呼吸を止めている 電車が通り過ぎて 音を立てて通り過ぎて 窓の外を通り過ぎて いった 夢が いつものあの夢が覚めて 僕は現実に帰還する 君はもうそこにはいない 部屋の空気は...

新しい年

新しい年がやって来て 僕は新しい自分になろうと思う 新しい星がやって来て 君は新しい夜になろうと言う 素晴らしい未来が待っていると 誰かが言った でも 僕は知っている 毎年似たようなことを考えては 結局は同じ結果になるの...

卵の祈り

ああ卵、卵 あなたはどうしてそんなに壊れやすいの? あなたはどうしてそんなに脆(もろ)いの? 僕が作り置きのサラダを取り出そうとしたとき、 どうして一緒に冷蔵庫から飛び出してきたの? 今月これで二度目だ 六個入りのパック...