詩 二本の平行線の間で Posted on 2016年11月24日 by 村山亮 / 0件のコメント 二本の平行線の間に僕はいる 上の線が風で下の線が水だ 僕はその二つの流れのちょうど真ん中にいて ただ移動している 二本の平行線はどこまでいっても交わらないらしい 上の線が風で下の線が水だ 僕はその二本の透明な直線の間にい...
詩 岩手山 Posted on 2016年11月24日 by 村山亮 / 0件のコメント 青空に 映える 岩手山 僕の 頭は 今 空っぽ 岩手山は ずっと前から そこにいる 彼は 何を 考えているのか 岩手が岩手になる前に 日本が日本になる前に 岩手山は...
詩 サイクル Posted on 2016年11月22日 by 村山亮 / 0件のコメント 春は匂(にお)やかな風 蠢(うごめ)く虫と それを啄(ついば)む鳥 肌に感じる生温かい空気 地面に広がる クローバー 我々は生きている 梅雨(つゆ)は灰色の空 ナメクジと 濡れたアスファルト 水たまりを踏む 車の音 雨は...
短編小説 自転車 Posted on 2016年11月17日 by 村山亮 / 0件のコメント 彼は自転車に乗って、一晩中都心に向けて走り続けていた。走り続けていればあれから逃れられるのではないかと思ったからだ。なぜ都心なのかは分からない。目的地なんてどこでもよかったような気もする。しかし走り続ける以上どこかに向か...
短編小説 魔女 Posted on 2016年11月17日 by 村山亮 / 0件のコメント 彼女はもう長年魔女をやっていて、そのとき大きな鍋の中身を木べらでかき回しているところだった。その中身が何なのかは分からなかったが、辺りにはなかなか良い匂いが漂っていた。 「蝦蟇がまの胆嚢たんのうとか、トカゲ...
短編小説 秘密 Posted on 2016年11月3日 by 村山亮 / 0件のコメント そのことに気付いたのは夜のことだった。布団に入ってさあ眠ろうと思った瞬間に、それはどこからともなくやって来た。始め僕はそれを上手く飲み込むことができなかった。あまりにも突拍子もない考えのように思えたからだ。でも時間が経つ...
短編小説 ミューズ(詩神) Posted on 2016年10月25日 by 村山亮 / 0件のコメント その日僕は詩を書いてみることにした。詩を書くなんて生まれて初めてのことだ。いや、全く初めてというわけでもないな。子供の頃夏休みの宿題で書かされたことがあった。でもあれは先生から書けと言われて無理矢理書いたものだった。今僕...
短編小説 郵便受け Posted on 2016年10月22日 by 村山亮 / 0件のコメント その日の夜八時頃、仕事から帰ってマンションの入り口にある郵便受けを開けると、中に二つの眼球が浮かんでいた。正確にはきちんと開けたわけではなくて、ただ中身が入っているかどうか投入口から簡単に確認しただけだったのだが。僕はそ...
短編小説 月 Posted on 2016年10月17日 by 村山亮 / 0件のコメント その朝僕は月面で目を覚ました。辺りは暗く、頭上では数えきれないほどの星々がきれいに輝いている。僕は始めのうちものごとの展開に付いて行くことができない。昨日の夜眠りに着いた時はちゃんと自分の部屋にいた。急に眠たくなって、い...
短編小説 標識 Posted on 2016年10月13日 by 村山亮 / 0件のコメント 僕の家の前には「40」と書かれた道路標識があった。もちろん制限速度四十キロ以下という意味なのだが、この標識は他の標識とは違ってほとんどの場合律儀に守られた。というのもその道路は完全に直角に折れ曲がっていて、四十キロ以上出...