Josh Preston (1872?-1897)
サンフランシスコ近郊の街で、たまたま出会ったカトリックの神父との間で
(訳注:彼は自称カトリックだった)
俺は三人の母親を殺したが、
三人とも俺の母親だった
俺は五人の父親を殺したが、
五人とも俺の父親だった
俺は四つの世界を知っているが、
どれも俺の世界じゃなかった
今まで五十七人の女と寝たが
本名を知っているのはそのうち二人だけだ
なあ、神父さん
人生には一体何の意味があるんだ?
一つだけたしかなことがある
それは本来俺が生まれてくるべきじゃなかったっていうことだ
そうだな
今まで四十八人の男を撃ち殺したが
一人としてまともな人間はいなかったね
どいつも死ぬべくして死んだんだ
ふと思うんだよ
あと百年もしたらここにいるみんなは――あんたも含めて――ほとんど全員死んでいるんだってな
だとしたら今死んだってたいした違いはないじゃないか?
俺にはクリスマスはこない
新年もこない
誕生日だってこない
そんなもの一度もきたためしはない
なんにもこないんだ
ただ死のほかは
訳注:彼は1897年12月27日、この言葉を残した四日後にかつて仲間であった男に撃たれて殺された。頭と腹に計八発の銃弾を受けた。そのとき彼は酔っていて――そして相手の男が知り合いだったということもあって――銃を抜くのが一瞬だけ遅れた。気付いたときにはすでに額に穴が開いていた、ということだ。享年25歳(と少なくとも本人は主張していた。噂によればもう五年ほど25歳のままだったということだが)。
誰かが彼の父親と母親を探したが、どこにも見つからなかった。そもそも出身地がどこなのかも誰も知らなかった。”I was born from nowhere” (「俺はどこでもない場所から生まれたのさ」)と生前彼は他人に対して言っていた。死後サンフランシスコ近郊の墓地に埋葬され、小さな墓碑銘さえ捧げられたが(誰が書いたのかは不明)、すぐにみんなに忘れ去られてしまった。ちなみに彼を殺した男はその二日後に別の殺し屋に撃たれて死んだ。誰一人彼の墓碑銘はつくらなかった。
ジョシュ・プレストンの墓碑銘
“From nowhere
to nowhere.
Oblivion will embrace you.”
「どこでもない場所から
どこでもない場所へと
忘却があなたを抱き締めるだろう」