雨の音に耳を澄ます
夜九時
通り過ぎるタイヤの音
遮断機が下りて
電車が走り抜ける
僕はここにいて
一人ここにいて
これまであったことを振り返っている
なにもかも小さなことのような気がするし
なにもかも重要なことであるような気もする
いずれにせよそれが僕の人生だったわけだ
しかし大事なことは
本当に大事なことは
まだ何も起こっていない
僕はちゃんとそれを知っている
生きることはときどきひどく退屈だ
そしてときに退屈ではない
その違いを見極めることは
正直難しい場合もある
まあいいさ、と僕は思う
ややこしいことは抜きにして
やれることをやろうじゃないか、と
死んだ人々が揺れて
ゆらゆらと揺れて
月の光を遮る
僕がやろうとしてきたこと
あまりにも小さくて
君の胸に届かない
僕の言葉は
正直なところ
まだそれほど正確ではない
でもまあ仕方あるまい
と僕は思う
だって今はこれしかできないのだから
とりあえずベストを尽くそうじゃないか
なんであれ
夢見心地の日々は終わった
絶望の日々も終わった
僕は毎日ちょっとずつ歳を取っているけれど
そんなことは大したことではない
本当に重要なのは
僕が僕自身になりつつあるということだ
だってたぶん
ずっとこれを求めていたのだから
君がどこにいるのか
僕には分からない
いつか会えるのか
それも正直分からない
でも
これだけはたしかに言える
霧が晴れたとき、あなたは真実の一端を垣間見るだろう、と