四月は残酷な月
どろどろと
血が流れて
どろどろと
血が流れて
私は
あなたの顔を見る
あなたは
そこにいて
でも本当は
そこにいない
一瞬ごとに
あなたは変わり
一瞬ごとに
私も変わる
四月は残酷な月
暖かい風が吹いて
暖かい風が吹いて
草花を揺らす
コンクリートに
亀裂が入り
生命が
生まれる
瞬間
あなたは
一度死ぬ
四月は残酷な月
虫たちが蠢き始め
虫たちが蠢き始め
宙を舞い
そして
地面に降りる
私は
ただそれを見ている
電車が通り抜け
季節のない電車が通り抜け
空気を切り裂いて通り抜け
時を殺す
私は
ただそれを見ている
四月は残酷な月
三月は夢見る心
五月は震える深緑
四月は束の間の桜
散って
風に
散って
落ちる
地面は
時折震え
それに合わせて
あなたも震える
ほら
このように
四月は残酷な月
私は今生きていて
あなたは今生きていて
でもそれもすぐに終わる
夢を見ていた頃に
一度あなたに会った
けれど
私はあなたに気付かなかった
空を飛んでいた頃に
あなたに会ったけれど
あなたは私に気付かなかった
今我々は時を共有しているけれど
実はそんなのは見せかけに過ぎない
なぜなら空白が
本当の空白が
どろどろと血を流しているから
あなたはそれを見ていないから
たぶん
四月は残酷な月
流れる川と
流れない川
青い空と
青くない空
死んだ鼠と
死なない鼠
昼と夜の隙間に
どこまでも続く隙間に
私は入り込む
逃げるように
足を動かす
誰かが追って来ている
歩を止めて
振り返ったとき
そこにあるのは
影
の
死骸
そして夢
色褪せた
かつての夢
だから四月は残酷なのだ
ここだけの話
それじゃあ
さようなら
また来年
もし会うことができたなら
おそらく