ああ卵、卵
あなたはどうしてそんなに壊れやすいの?
あなたはどうしてそんなに脆いの?
僕が作り置きのサラダを取り出そうとしたとき、
どうして一緒に冷蔵庫から飛び出してきたの?
今月これで二度目だ
六個入りのパック
四つが駄目になり
かろうじて一つだけを救い出すことができた(あと一個は前日に食べた)
今月これで二度目だ
果たして何個の貴重な命が無駄に費やされたのだろう
床に散らばった白い殻
そして潰れた黄身
潰れた君
透明なたんぱく質が、ドロドロと床を覆う
僕はそれを拭きながら(涙目)、決意する
もう二度と君を――黄身を――駄目にはしない、と
ということでアマゾンで「たまごのおうち」なるものを買った
プラスチックのケースで君を保護する
もちろんそれはいいのだけれど、
これで1,120円って高くないか?
原価いくらなんだよ、もう
でもまあ仕方あるまい
世の中そううまくはできていないのだ
そして金がものを言う
いつだってそうさ
いずれにせよ、これできっと君を――黄身を――保護することができるはずだ
誰から?
僕自身から
僕自身の性急さから
僕自身の不注意から
僕自身の怠慢から
やれやれ
まったく
いやになっちゃうね
でもまあ、明日にはきっと、いろんなことがうまくいくようになるさ
なんとなくそういう気がするよ
なにしろ君はケースに守られているからね
僕の柔らかい魂は
何にも守られていない
そこには大きな違いがある
でもその分、自由に動くことができる
というかできるはずなのだ
今日もすばらしい天気だった
雲ひとつない青空だ
僕は毎日少しずつどこかに向けて進んでいる
というかそう思って生きている
歳を取ることは避け難いけれど
誰にも成長を止めることはできない
そう信じて生きている
ああ、ほら
子どもが遊んでいる
彼らの魂もまた、脆く、壊れやすい
僕らは卵なのだ
殻と、白身と、黄身
うん
殻と、白身と、君
さあ立ち上がって
一歩目を踏み出そうじゃないか
僕があなたを守ってあげる
特別な力で
祈りの力で