『マグカップの虐殺』
粉々になったマグカップ
白い
スヌーピーの絵が印刷されたマグカップ
一年かそこら
勤めを果たし
今日
午後2時30分
持ち主の手によって
破壊された
もちろん意図したわけではない
いわば過失致死だ
お盆の端に手をかけたら
全部ひっくり返ってしまった
お湯が湧いたら
淹れようと思っていた
コーヒーの粉も全部含めて
雑巾で床を拭きながら
その白い破片を拾いながら
僕は思った
人生とは何と儚いのかと
何もかもまるで夢のようだ
僕は僕であり
同時に僕ではない
あるいは僕は
あのマグカップだったのかもしれない
いずれにせよ
やがて新しいカップがやって来て
その空白を埋めるだろう
今度は決して割れない
ステンレスのカップが
その間
僕は懲役刑に処せられ
コーヒー無しで生きなければならない
当然の報いだ
2017年10月18日(水曜日) 自宅にて