魂を売ること
そのコンビニでは魂を売っていた。小さな瓶に入っていて、青く光り輝いていた。隅の方の棚に置かれていたのだけれど、値段シールが何枚も重ねて貼られていた。おそらくはそれだけの回数、値下げしたのだと思う。今は税込で50円だった。...
そのコンビニでは魂を売っていた。小さな瓶に入っていて、青く光り輝いていた。隅の方の棚に置かれていたのだけれど、値段シールが何枚も重ねて貼られていた。おそらくはそれだけの回数、値下げしたのだと思う。今は税込で50円だった。...
今日も生きています。なぜかは分からないけれど、今日も生きています。考えてみれば、「なぜ」に対する明確な答えがなくとも、人は案外生きていけるものなのかもしれませんね。ズルズルと、ダラダラと・・・。僕はそういう心的状態が割と...
私は名前と顔と、記憶をも失ってしまった。いや、正確に言えばそれらのものは——少なくとも「顔」と「記憶」の一部は——きちんと存在してはいるのだが、私の本来のものではないのだ。私には本能的にそれが分かる。 ある朝起きたとき私...
『方丈記』は素晴らしい。本棚にあった岩波文庫版を久し振りに読み返してみた。「ゆく河の流れは絶えずして・・・」。本当に名文だと思う。まさに文章が河の流れとなって、ところどころ渦を巻き、時折水滴を太陽に反射させながら、下流へ...
「忘却装置」というものがあると便利だよな、と私は常々思ってきた。 「忘却装置」というのは要するに、都合の良い記憶を――つまり覚えていると都合の悪い記憶、という意味だが――ピンポイントで消せる装置のことである。たとえばあな...
毎日毎日毎日毎日・・・たくさんの靴紐(くつひも)たちが、結ばれているのです 雨の日も雪の日も、嵐の日も(もちろん快晴の日にだって)靴紐たちは結ばれているのです 彼らは何を考えているのでしょう? 靴の主(ぬし)のことを考え...
新しい夢を見るために、私は今日目覚めてきたのです 新しい響きを辿るために、私は今意識を保っているのです 昨日嗅いだ、排気ガスの臭いが、まだ記憶の扉を、叩いているのです あなたは、今そこにいて、何を見ているのでしょうか? ...
2023年1月23日、月曜日。午前中に前日までの気持ちを文章にして認(したた)め、お昼過ぎから走ることにする。昼食は食べていない。実家のある宮城県は東京よりだいぶ寒い。しかもこの冬一番の最強寒波が近づいているというでは...
2023年、1月22日、日曜日。夜。僕は今実家の仏壇のある部屋にいる。ここに母親が布団を敷いてくれたのだ。6年10ヶ月前に八王子に出てくる直前まで、僕はやはりこの部屋で寝起きをしていた(寝起きさせて頂いていた。仕事もせ...
明けましておめでとうございます。2023年です。まさかこんな年がやって来るとは誰が予想できたでしょう? まあみんなできたか・・・。とりあえず生き延びてさえいれば一月(いちがつ)には新しい年がやってきます。それが自然のサ...