デイブ・マシューズのぎこちない歌声

2018年11月4日(日曜日)

「ぎこちない」と題名に書いたけれど、本当はそれほどぎこちなくなんかない。ただ彼の場合、歌うときに全身に力を込めて絞り出すように声を出すため、必ずしもなめらかには聞こえない、というだけのことだ。そして彼本人も “Singing shouldn’t be such a struggle” (歌うことは本来こんなに苦労するものじゃないよな)と自嘲気味に語っている。

僕は以前から彼の存在を知っていたのだが(例によってピーターさんの番組で聴いた)、数カ月前にTiny Desk Concertで彼がソロで歌っているのを見つけて、これは素晴らしいと思った。一曲目のSamurai Cop (Oh Joy Begin) が特に素晴らしい。何度この動画を観たことか。

彼は南アフリカのヨハネスブルク生まれで(1967年1月9日生まれ)、その後アメリカ、イギリスと移り住んだ。父親は子どもの頃に肺がんで亡くなったということだった。再び南アフリカに戻ったあと、18歳の頃に徴兵を逃れるため(彼は平和的クエーカー教徒だった)アメリカに移住した。最初に住んだのはニューヨークだったが、そのあとすぐにバージニア州のシャーロッツヴィルという街に移った。その頃に本格的に音楽活動を始めたらしい。

彼はその街でバーテンダーとして働いているうちに、Dave Matthews Bandという自らのバンドを結成することになる(1991年)。そこから彼のミュージシャンとしてのキャリアが始まっていく。

と、ここまで書いたものの、実は僕は彼のアルバムを二枚しか聴いていない。図書館で借りたデビューアルバム、 “Under the Table and Dreaming” (1994) と前述したTiny Desk Concertを観たあとに買った最新アルバム”Come Tomorrow” である(ちなみにどちらも名義は “Dave Matthews Band” )。


“Come Tomorrow” の一曲目にはTiny Deskでも歌っていた “Samurai Cop (Oh Joy Begin)” が入っている。この曲の題名の “Samurai Cop” というのはDaveが作曲当時観ていたドラマの題名から取ったそうで、歌詞の内容とはまったく関係ない。どこにもサムライは出てこないし、警官も出てこない。

じゃあ何が出てくるのか、というと、おそらく新しい環境に連れてこられた小さな子どもである。ここで一つ補足すると、彼の姉は南アフリカに住んでいるときに夫に殺されて亡くなったらしい(夫はその後自殺した)。出典がウィキペディアなのでどこまで正確かは分からないけれど、まあ大筋の事実は間違っていないと思う。彼女の幼い遺児二人はアメリカに渡り、デイブとその妹によって責任を持って育てられた、ということだった。おそらくそういった経験がこの曲の歌詞に(ある程度)反映されているのだと思う。

まあいずれにせよ、彼のその絞り出すような歌声と歌詞が見事にマッチしていて、とても良い仕上がりになっている。バンドメンバーと共に演奏しているアルバムバージョンも良いし、アコースティックギター一本でやっているTiny Deskの方も素晴らしい。とにかくその歌い方に彼の実直な(おそらくそうだろうと推測するだけなんだけど)人柄がよく現れている。僕はこれを聴くたびに、よし今日も頑張ろうじゃないか(あるいは新たなよろこびが始まるかもしれないから)と感じるのである。

P.S. ちなみに彼がティム・レイノルズ(Tim Reynolds)というギタリストと共演しているこの動画もアコースティックギターの極致という感じで、とても素晴らしいです。Timさんはシャーロッツヴィルでバーテンダーをしていた若者デイブを自分のステージに呼んだり、自作の曲を録音するよう説得した張本人だそうです。

中盤のTim Reynoldsの演奏は圧巻で、ほとんど笑いしか出てこない。
村山亮
1991年宮城県生まれ。好きな都市はボストン。好きな惑星は海王星。好きな海はインド洋です。嫌いなイノシシはイボイノシシで、好きなクジラはシロナガスクジラです。好きな版画家は棟方志功です。どうかよろしくお願いします。

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