選挙

 この間選挙があって、いささか変わった候補者を見た。  彼は腹の出ている55歳の男で、現在は無職だ、ということだった。市議会議員選挙に立候補したきっかけは・・・お金が欲しいから。とにかくお金が足りない、というのが彼の主張...

新しい生活

注:これはnoteに先に出した記事なので、このサイトでいつも読んでくださっている皆様には既知の情報が含まれていると思います。どうか悪しからず・・・(読み飛ばしちゃってください。その部分は)。 と、いうことで新しい生活です...

火星人

火星人1:「しかし地球人はさ、あまりにも視野が狭過ぎないか? 本当に目に見えるものだけを見ているんだから」 火星人2:「まあ仕方ないさ。それがホモ・サピエンスだもの。昔からそんな風にできていたんだよ。嫌なら火星に帰ればい...

夢を見た。こんな夢だった。私はたった一人で森の中を歩いている。深い深い森だ。木々がぎっしりと、僅(わず)かな隙間だけを残して生えていて、私はその「僅かな隙間」を縫うように進んでいく。キノコが生えている。攻撃的な棘(とげ)...

新しい世界

僕は新しい世界に生きている 新しい世界にはルールがない 新しい世界には人がいない 新しい世界には風が吹いている 新しい風が 新しい世界には孤独がない 新しい世界には言葉がない 新しい世界には死がある しかしそれは絶望では...

魂を売ること

そのコンビニでは魂を売っていた。小さな瓶に入っていて、青く光り輝いていた。隅の方の棚に置かれていたのだけれど、値段シールが何枚も重ねて貼られていた。おそらくはそれだけの回数、値下げしたのだと思う。今は税込で50円だった。...

空白の男

私は名前と顔と、記憶をも失ってしまった。いや、正確に言えばそれらのものは——少なくとも「顔」と「記憶」の一部は——きちんと存在してはいるのだが、私の本来のものではないのだ。私には本能的にそれが分かる。 ある朝起きたとき私...

『方丈記』を読んで

『方丈記』は素晴らしい。本棚にあった岩波文庫版を久し振りに読み返してみた。「ゆく河の流れは絶えずして・・・」。本当に名文だと思う。まさに文章が河の流れとなって、ところどころ渦を巻き、時折水滴を太陽に反射させながら、下流へ...