朝が僕らの上にやって来て

朝が

僕らの上にやって来て

足早に

通り過ぎて

いきます

僕は

そんな朝に手を伸ばして

この人が

遠くに行ってしまう前に

エネルギーを

吸い取るのです

神が

僕らのしたにやって来て

足元を暗い影で覆うのです

僕は

あなたのことを思いながら

ただひたすら

祈りを捧げるのです

闇が

光を

打ち負かしてしまわないように、と

雨が

僕らの上にやって来て

人々の肌を

刺しつらぬくのです

僕は

窓辺にじっと立っていて

そんな殺戮さつりくの様子を

ただぼおっと

眺めているのです

細胞が

口々にわめき立てて

それぞれの主張を

繰り広げるのです

あなたは

顕微鏡片手に

耳を澄まして

そんな彼らの声を

ボイスレコーダーで録音するのです

世界は

こんな風に回っているけれど

朝は

常に朝なのです

なにしろこの人は

東から西に向けて

いつも移動しているのだから

朝の裏には夜がいます

夜もまた

足早に

人々の上を通り抜けて

いくのです

夜がもたらすのは夢です

様々な

人々は夢の中で

夢見ている自分を

見つけるのです

そのときあなたは夜になっている

そう

いつも走り回っている

夜に・・・

子午線を

ハードルのように跳び越して

朝は(夜は)

先へ先へと進むのです

僕は

追いかけようとするけれど

結局は負けて

元の窓辺に戻るのです

そして

ただじっと見つめるのです

雨がしとしとと

地面を濡らしていくのを

影が

あらゆる場所に忍び寄ってきて

死者の言葉を

人々に

伝えるのです

でも

それを聞く人は少ない

砂粒に混ざった

ありよりも

少ない

言葉は

バラバラに分解されて

空気中に散っていきます

そしてその場に残り

やって来た人々の魂を

殺すのです

僕はただ窓辺で

それをじっと眺めています

僕はある日

朝を手中に収めて

フラスコに入れて

コルクで栓をして

そっと冷蔵庫に

入れておきます

卵たちの

隣にね

世界は朝を失って

すべてが夜になり

人々はずっと夢を見ているの

です

そして言葉たちは

これ幸いと

生命を取り戻し

生き生きと

街をかっしているの

です

僕は

レンジで自分自身を温めて

体温を回復し

間違った言葉たちを

殺しにいきます

血がドロドロと流され

雨がそれを

どろと混じり合わせ

そして

海へと運んでいきます

朝は

フラスコを破壊し

冷蔵庫をも破壊して

僕の部屋もついでに破壊して

外に出てきます

僕はそれを

じっと見ている

アスファルトに寝転びながら

空が明るくなり

人々は目を覚まします

ああ、夢を見ていただけだったんだ、と彼らは思います

、と

世界はまた元のように回転し出します

でも

僕は知っている

これもまた夢のようなものなのだと

真実は

いつも

死者の言葉の

動きの中に

示唆されているのだと

僕は目をつぶります

そして脈拍を

じっと

測っている

夢が

——新たな夢が——

意識を

そっと覆うまで

村山亮
1991年宮城県生まれ。好きな都市はボストン。好きな惑星は海王星。好きな海はインド洋です。嫌いなイノシシはイボイノシシで、好きなクジラはシロナガスクジラです。好きな版画家は棟方志功です。どうかよろしくお願いします。

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