近況など(その2)

2019年10月18日、金曜日。

さて、突然の近況報告です。何があったか? ええとまあ、基本的にはめでたいことです。文学賞を取ったのではなく、スーパーオーガニズムのオロノさんの番組に(ラジオです)、僕のコメントが取り上げられたのです。

ええと、ご存じない方に説明しますと、「Superorganism」というのは日本出身の野口オロノさん(たしか19歳)をボーカルとする、八人組の多国籍バンドです。僕は例によってピーター・バラカンさんのラジオ番組でその存在を知り、NPRのTiny Desk Concertでライブの動画を観て、すぐにファンになりました。

まず第一にいえるのは、どこにもこんなバンドはいない、ということです。彼らはそれくらいユニークな空気をかもし出しているのです。そしてとにかく楽しそう。音楽をやることを、純粋に楽しんでいます。

しかしなによりも、このバンドの核となる存在がボーカルのオロノさんです。彼女の醸し出す雰囲気は、ちょっと尋常じゃないです。日本生まれでありながら、アメリカの学校に行き、そして今はロンドンを拠点にしています(というか少なくともそういう話をウェブの記事で読みました)。でも本当に重要なのは、彼女のメンタリティーのようなものです。独立心に富み、「自分のやりたいことをやる」ということに関しては、他人に簡単に譲歩したりはしない。やりたくないことはやらない(正直ここには僕の推測も混じっていますが)。十歳ほど年下ですが、僕はそういった姿勢に感銘を受けたのです。

でもまあ、基本的には、ややこしいことは抜きにして「彼らの音楽が好きだった」ということです。”Something For Your M.I.N.D.”も好きだし、”Everybody Wants To Be Famous”も好きです。”The Prawn Song”も好きです(”prawn”って・・・エビ?)。もちろんそのほかの曲も好きです。オロノ(敬称略)の歌い方には、彼女にしかない独特のトーンがあります。それは熱唱系の歌手とは違うものです。私は私なんだからそれで何が悪い、という感じ。いや、本当はそんなにつっけんどんなわけではないのかもしれない。彼女はただ単純に、自分の中の歌を自然に外に表出しているだけなのかもしれない。

実をいうと、その姿の中に、僕は自分のあるべき姿--というかそうありたい姿--を重ね合わせてしまうのです。僕の場合は基本的には文章でそれを表現する、ということにはなりますが。要するに「自分の世界観を築き上げる」ということだと思います。他人に何を言われようと気にしない(これがなかなか難しいのですが)。あくまで自分のリズムで、自分の言いたいことを言う。そういう姿に僕は魅かれるのです。

おそらく優れたミュージシャンはみなそういうことをやっています。優れた作家もまた、みなそういうことをやっています。とにかく自分の文章を書くこと(曲を作ること、歌を歌うこと)。イミテイターたちと彼らとを隔てるのは、どこかに--どこか中心のような場所に--つながっているというたしかな実感です。それがあって初めて我々の精神は(たとえ一瞬だけにせよ)安心できる場所を確保できるのではないか?

なんにせよ、僕としては自分の文章を書くだけです。ラジオでは相当長い文章をほとんど全部読んでもらいました。正直そこまでまったく期待していなかったので、驚いています。30分番組であんなに時間を取っていただいて、なんだか申しわけないような、恥ずかしいような、そんな気持ちです。でもオロノさんがあれを「読もう」と思ってくれたという事実そのものが、僕の--孤独な--心を温めてくれます。どうもありがとうございます。

肝心の内容については、おそらく来週の木曜日(2019年10月24日)まではradiko(ラジコ)のタイムフリーで聴けるはずです。番組名は『Oh Wow, Very Cool!』、InterFM897で毎週木曜日の23:00からやっています(僕は録音して大体翌日に聴いています。だから今日そのことを知ったのです)。僕のコメントが読まれるのは、始まってからおよそ12分30秒くらいのところ(00:12:30)だったはずです。彼女の発言は、大体いつも面白いです。日本的常識からかけ離れている、ということもあるのですが、それだけでなく、物事に対する一種の積極性というのかな、そういう姿勢がリスナーを--というか僕を--刺激してくれます。実際僕はこの番組を聴いて(自分は今まで結構イカれていると思っていたけれど)全然イカれ度合いが足りないじゃないか、と身を持って気付かされました。そして決意したのです。よし、もっともっと変なことをやってやろう、と。

音楽ライターの小田部おたべさんとのかけ合いもとても素敵です。彼はたしかにちょっとゆがんだものを精神に抱えているような気がする(もちろん良い意味で、ですが・・・)。星野源さんとのトークも(パフェ!)「め組」の菅原さんとのトークも(ムーミン!)面白かったです。ラジオは最近僕のほとんど唯一の心のよりどころとなっています。

いずれにせよ、そろそろ自分の仕事に戻ります。最近はどうも絵も描きたくなってきて、なかなか時間が足りないのです。学校の授業なんかではあまり好きじゃなかったのに、不思議なものです。この歳になって描きたくなってくるとは・・・。

なんにせよ、自分の中にまだ未知の領域が広がっているというのは、素敵なことです。やることがある、というのはなによりも(つまり精神衛生にとって)重要なことかもしれない。あまり難しいことを考えないというのがこれからのテーマになっていくような気がしています。それよりも手を動かすこと。そして身体を動かすこと。。うん。まあとりあえずはそれでいいんじゃないかな。行きまったらまあ、そのときに考えます。それでは。

ミネソタツインズのファンなら誰だか分かるはず・・・。
この視線の先には一体何があるのか・・・
村山亮
1991年宮城県生まれ。好きな都市はボストン。好きな惑星は海王星。好きな海はインド洋です。嫌いなイノシシはイボイノシシで、好きなクジラはシロナガスクジラです。好きな版画家は棟方志功です。どうかよろしくお願いします。

6件のコメント

  1. ラジオとても面白かったです。
    日本にイカれたものが増えたらもっとみんなイキイキと暮らせるのではないかな勝手に思っております。創作活動頑張って下さい。

    1. Sさん。コメントどうもありがとうございます。
      そうですよね。日本にはもっとイカれたものが必要ですよね。僕は実にそう思います。
      みんなちょっと真面目すぎるんじゃないか・・・と、ときどきふと感じることがあります。
      いずれにせよ、僕は僕のことを頑張ってやりたいと思います。というかまあ、それしかできないですしね。

  2. こんにちは たくみと申します。
    ラジオのアーカイブを聞いていたら同郷の方のメールが読まれとても驚きました。
    僕は現在19歳で、市内のT高校を卒業し自宅で浪人生活(なんと2年目)を送っています。 中高と自分や他人に不満ばかり抱え、規範意識を押し付けてくる大人や群れてばかりな同級生と気が合わずに死んだような日々を、音楽を心の支えに何とか送っていました。大学生になったら受験で離れていたギターの練習をしよう、読みたい本を沢山読もう、海外にも行ってみよう、とにかく創作活動をしようとそれを胸に何とか生きています。 そんな中、同郷出身で創作活動をされている方を、自分の人生を生きようとしている方を、なんとオロノのラジオで見つけた!とてもとても嬉しくなりました。 なんせ田舎ですし、文化的な面でも気の合う人なんて全くいませんでしたから。 自分語りばかりで申し訳ないです。聞いてすぐにメッセージを送らずにはいられませんでした。素敵な出会いをありがとうございました。いつか会ってお話してみたいです。 諸活動応援しています!

  3. たくみさん。コメントありがとうございます。
    そうか、T高校を卒業なさったんですね。実は僕も(おそらく同じ)T高校出身で、仙台の大学に行きました。あの土地は--あるいはこれは僕がそこで生まれ育ったからそう思うというだけかもしれませんが--意外に強い力を持っているような気がします。なんにもないのですが--田んぼはありますね--そのなんにもなさが、結構大きな意味を持っています。東京に来て、ひしひしとそれを感じるようになりました。
    でも、にもかかわらず、当時はそこを出るしかなかったんだろうな、という気はしています。浪人生活二年目ということですが、僕も(ちょっと事情は違いますが)大学を卒業したあと、二年間仕事もせずに実家にいました。周囲の目も気になるし、ちょっと辛いですよね。しかしながらあの頃はほかにどうしようもなかった。そのままほいほいと就職してはいけなかったのです。少なくとも僕の場合は、ということですが。
    19歳でこんなにしっかりした文章を書けるところからして、ちゃんと自分というものを持った方なんだな、ということは分かります。これからどのような道に進まれるのかは分かりませんが、是非頑張ってください。僕も頑張ります。
    P.S.ちなみに僕は当時栗原市立図書館に入り浸っていました。庭にあった大きな木は中が腐ってしまって、切り落とされてしまった。それはともかく、あそこでトマス・ピンチョンとか、マルセル・プルーストとか(変な取り合わせですが)読みながら、ここでこんなもの読んでるの俺くらいだよな、とか思っていました。ちなみにあそこにあったオペラのDVDも全部借りて観ました(もっとも十本くらいしかなかったような気はしますが)。

    1. 返信ありがとうございます。
      なんと先輩ですか…! T高から難関校に進学される方は数年に1人位ですよね? とても尊敬します。。しかも市立図書館は僕も小学生で親の迎えを待っていた頃から何度も利用しています。あの木のことも勿論覚えています。トマス・ピンチョン、マルセル・プルースト、オペラ等この出会いをきっかけに知ることが出来てとても嬉しいです。必ず触れていきたいと思います!
      大学生活は東北から出たいと考えているので、その時が来たら改めて地元の良さを感じる事ができるのだなと、どのように感じるかとても楽しみにしています。

      P.S.
      先程、オロノの番組のお陰で素敵な出会いがあったとDMで報告したところ、よろしく伝えてとのことでした。 嬉しいとも言ってくれました!

      1. たくみさん。そうですか。あの図書館に行っていたんだ。だとするとたぶんどっかですれ違っていますよ。かなりヘビーユーザーだったから。
        ピンチョンとプルーストは、たぶん読まなくてもいいかも・・・。というのもその本を読んだところで(おそらく)人間的に向上するというわけではないから。僕がその二人をあげたのは、つまり(1)長くて(2)おそろしく読みにくい、という共通点があったからです。でもまあ、何を読むのかはあなたの自由です。お好きになさってください。
        地元の方からメールがくるというのは嬉しいものです。でも一方でそれで喜んでいる場合じゃないよな、と思うことも事実です。僕は僕のことをやります。とりあえず夕飯を食べてから。
        P.S. オロノ(さん)のおかげでたしかにこうして新たな出会いがありました。それはとてもありがたいことです。しかし僕はまだ何かを成し遂げたわけではありません(なにしろ28になってアルバイトですので)。これからもっと成長していきたいと思います。

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