救出

今日僕は居残りを命じられた。宿題だった漢字練習のプリントを家に置き忘れてきてしまったのだ。よりによってこんな日に。というのも、いつもはクラスに何人かほかにも忘れる人がいるのだが、なぜか今日に限ってそれを持ってこなかったの...

死の来訪

天気の良い土曜日の午後二時、部屋で気持ち良くうたた寝をしていると、突然ドアベルが鳴った。僕はまだ半分夢の世界にいながら、その音を聞いていた。それは最初遠い汽笛のように聞こえたが、やがて耳障りな女の叫び声になり、最後にはま...

墨田川 3

(『墨田川 2』の続き)   その1週間後、また彼が僕の部屋にやって来た。時刻は午前3時だった。彼はまたしても海水パンツにシュノーケル付きのゴーグルという格好だった。僕はひどく眠かったものの、今度は自分から彼の...

隅田川 2

(『隅田川 1』の続き)   その1週間の間中、彼が書いた酔っぱらいの姿が、僕の中で何度も浮かんだり消えたりしていた。彼は太平洋を突っ切って、その自己流のクロールで金色のウィスキーの流れを追い続けていた。それが...

墨田川 1

「一体どうして神田なんだ?」と僕は言った。   「だって古本屋街があるだろう」と彼は言った。「当然じゃないか」   でも僕にはそれがさほど当然なことだとは思えなかった。というのも場所なんて関係ない、と...

第二次ポエニ戦争

ふと目を覚ますと、隣には第二次ポエニ戦争が眠っていた。私は恐る恐るその肩をつついてみたのだが、彼(あるいは彼女)は全然目を覚まさなかった。一体何が起こっているのだろう、と思ってあたりを見回したが、部屋には普段と変わったと...

歩くこと

そのとき僕はずいぶん長く街を歩き回っていた。季節は冬で、これからさらに寒くなろうとしていた。僕はコートのポケットに両手を突っ込み、マフラーに顎あごをうずめて、黙々と歩き続けていた。どこか目的地があったわけではない。ただそ...

啓示 3

『啓示 2』の続き   『啓示の物語』(肉付け版)   (便宜的に、これから死ぬ方の青年を「X」、それを見届ける方の男を「A」と呼ぶことにする。ちなみにどうして彼が「X」なのかというと、「その方が『B...

啓示 2

『啓示 1』の続き   彼はそこで突然話をやめ、何か飲みものはいらないか、と訊いてきた。僕はそんなことよりも早く話の続きが聞きたかったのだが、それでも確かに喉が渇いていた。なんでもいい、と僕は言った。 &nbs...